老老相続
還暦相続
2月11日の日本経済新聞に、「国庫に帰属『相続人なき遺産』1000億円超」という記事が出た。
相続があったにもかかわらず相続人がいないため、国庫に納付された相続財産が1000億円にもなったとのことである。相続開始の高齢化による象徴的な出来事といえる。
相続人は配偶者と第一順位は子、子がない時は第二順位として直系尊属(父母・祖父母)、親もない時は第三順位として兄弟姉妹というように民法で定められている。高齢化社会になった今、配偶者、父母は当然としても子供がいないのは少子化社会を反映しているのかもしれない。
国税庁のホームページによると、被相続人の平均寿命(相続開始年齢)は男:81・05歳、女:87・09歳、最頻値は男:88歳、女:93歳となっている。その相続人の52・19%が60歳以上とのことである。
高齢者の定義(世界保健機関では65歳以上)を見直さなければならないと思うが、定年延長の動きが始まったとはいえ還暦を一つの区切りとすれば「老老相続」といってもよいのではなかろうか。
老老相続の問題点
老老相続の問題は切り口によってさまざま、例えば、
①資金の老老循環
②資金の地方から首都圏への流出
③高齢化による意思能力欠如による手続き上の諸問題
などがあるが、今回は①に絞って意見を述べたい。
還暦では既に人生の最盛期を過ぎ、社会的にも経済的にも功あり名を遂げた人生の終盤への入り口に立ったところである。還暦はこれから人生の終盤に向かっての出発点といってもよい。
このような人生の終盤に向かっての人生が始まったときに相続によって財産が入ってくる。高齢相続人に蓄積された金融資産が金融機関に滞留し、経済活動に活用(本来は金融機関の役割)されないまま滞留して、次の相続においても、既に還暦を迎え現役を引退した者が財産を相続する結果、積極的に経済活動に活用する術がないまま、老老循環のループに入ってしまうことである。
少子高齢化と老老相続
岸田前首相は異次元の少子化対策として人口減少対策を打ち出し、人口減少を政策の中心に取り上げた。今まで、高齢化社会の到来によるいろいろな歪から高齢者対策に重点がおかれてきた。しかし、ここ十年来の人口減少が加速化し、人口減少が連年話題に取り上げられてきた。
戦後日本では1947年から49年にかけて毎年およそ270万人のこどもが生まれた。2024年には72万人まで減少し、人口の自然減は、▲89・8万人で和歌山県(88・4万人)一県が消滅するほどになってきている。(2月28日掲載 日本経済新聞)
このような急激な人口減少は国家の衰退を招く大きな要因であり岸田前首相が異次元の少子化対策を打ち出した所以でもある。
提案:こども年金
「こども年金」については、ほっとタイムス291号『物足りない少子化対策』、304号『こどもは国の未来』で軽く提案させていただいているが、一歩踏み込んだ提案をさせていただきたい。
以下は、304号で提案したものである。再掲載する。
「異次元の少子化対策を提案しよう。
こどもは生まれた瞬間から一人の人間として生存する権利を有するのであって、経済力の有無に関係なく人間として生存していく権利があり、親の経済力の有無によって生存権を脅かされるようなことはあってはならない。
親は子供を養育する義務を負っているが、親の経済力によって生存権を左右されることのないように、生まれた子供に年金を支給、青年になるまで、さらには社会還元ができる30年間、子供への投資と考えれば、理に適うのではなかろうか。
こどもは国の未来、こどもへの投資は、今始めてもその成果は20~30年後に実を結ぶ超長期の投資である。」
「こども年金」の財源をどうするか、建設国債に準じた子供への投資と位置付けて投資した子供が社会還元する30年後と想定し30年の超長期の「こども年金国債」を発行してはどうであろうか。
併せてこの「こども年金国債」は老老相続等一定の条件のもと相続税を非課税にする、相続税の納付資金に充当することができるようにしてはどうであろうか。
いわゆる、老老相続で滞留する資金を子供への投資として社会に還元させる一石二鳥の効果を期待できると思うのである。
LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

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