寄付と遺贈

1月に能登半島地震が発生し、被害の大きさに言葉を失いました。ボランティア活動などが制限される中で、ふるさと納税を利用した被災地域支援が拡がりました。

自分の想いを届ける方法として、寄付と遺贈を取り上げます。

1 寄付・募金

寄付:お金や物を贈ること
募金:街頭や企業などがお金を集める活動、お金を贈ること

寄付や募金は目的により様々な手段があります。今回の災害でも、ふるさと納税以外に多くの団体や企業が募金活動をしていますが、支援目的や方法も異なります。募金詐欺も発生しているため、信頼できる団体か・支援の内容はどうなっているか、見極めることも大切です。

【災害支援】 ふるさと納税(各自治体) ARROWS など
【子どもの支援】 日本ユニセフ 全国こども食堂支援センター・むすびえ など
【教育支援】 カタリバ e-Education など
【環境保護】 グリンピース・ジャパン 緑の募金 など
【社会福祉】 難民を支える会 国境なき医師団 など

寄付先を選ぶポイント

〇 信頼できる団体か

・法人として3年以上の活動実績がある
・活動内容や財務情報を公開している
・寄付者が多く、継続的な寄付者がいる

〇 寄付金控除の対象団体か?

日本承継寄付協会、日本財団、レディーフォーなどの団体では、寄付先の選定や手続きをサポートする仕組みもあります。

2 寄附金控除

寄付金控除とは

寄付をした個人や法人が、申告することで税制上の優遇措置を受けることができる制度です。国が認めた認定NPO、公益社団法人等、国や自治体、学校や政党等への寄付を申告すると、所得税、法人税、相続税、住民税について税制上の優遇措置(寄附金控除)を受けることができます。個人の場合は、以下の ①寄附金控除と ②寄附金特別控除の、有利な方を選択することができます。

① 寄附金控除(所得控除)

その年の寄付金額の合計 - 2,000円 = 寄付金控除

② 寄附金特別控除(税額控除)

(その年の寄付金額の合計 - 2,000円)×※40% = 特別控除額
 ※政党等寄附金特別控除の場合は、30%

寄附金控除を受ける場合の注意点

寄付先の団体や、寄付の種類によっては控除対象にならない場合もあります。寄付をする際には、寄付先が控除対象になっているかどうかを確認しましょう。控除を受けるには、寄付先から発行される寄付金の領収書(領収証明書)が必要となります。

3 ふるさと納税

ふるさと納税は、生まれた故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度です。自治体の取り組むまちづくりや復興支援などさまざまな課題に対して、寄付金の使い道を指定でき、地域の名産品などのお礼がもらえる仕組みで、その返礼品を目的に多くの人が利用しています。

その反面、2022年度横浜市では272億円、川崎市では121億円の住民税が流出し話題となりました。横浜市は地方交付税の交付団体の為、流出分の75%は国から補填されますが、川崎市や東京都・23特別区は、不交付団体の為、流出分はそのまま減収となっています。

寄付金のうち2,000円を超える部分について、所得税や住民税の控除が受けられます。【寄附金控除】

今回の能登半島地震では、1月9日時点で、ふるさと納税サイトを通じて16億円が集まりました。石川県、輪島市など特定の県や市区町村を選択し、返礼品はなく全額が寄付できる仕組みとなっています。

4 遺贈寄付

寄付により想いを伝え実現する方法のひとつに「遺贈寄付」があります。遺贈寄付は、遺言により社会貢献やふるさとや母校など社会への恩返しができる仕組みで、亡くなった後の財産の一部または全部を指定することができます。

メリット

① 財産の使途を自分で決められる

② 老後資産に影響しない

亡くなった後の財産から寄付されるので、安心して生活し好きな事にお金を使うことができる

③ 少額からでもできる

金額に関係なく少額から寄付できる

手続きの流れ

⒈ 相続人と財産の内容を把握する
⒉ 自分の財産の承継先・寄付先を決める
⒊ 遺言執行者を決めて、遺言書を作成する
⒋ 亡くなった後に、遺言執行者が寄付の手続きをする

遺贈における注意点

遺贈を行う場合には、遺言書を作成する前に遺留分が請求される可能性をあらかじめ考慮しておきましょう。遺留分を踏まえ、誰に何を譲るかを決めると同時に、受け取った受遺者の負担にならないよう受遺者に課せられる税金のことも配慮する必要があります。

遺留分とは、配偶者や子ども等の法定相続人に最低限保障される遺産取得分で、「法定相続分」の半分と定められている

「相続」との違い

「相続」では財産の受取人は相続人ですが、「遺贈」の場合は、遺言に記されていれば特に制限はなく、相続人以外の特定の個人だけでなく、学校や施設など法人でも財産を受けとることができます。

「死因贈与」との違い

生前に自分の財産を誰に譲るかを決めていることまでは同じですが、「死亡を原因とした贈与契約」という点が異なります。契約なので、遺贈と違い受けとる相手とのあらかじめの合意が必要で、合意があれば法定相続人でもそれ以外の第三者でも、財産を受けとることができます。

税金の取扱い

遺贈も死因贈与も死亡を起因として財産を受けとる点では相続と同じですので、贈与税ではなく相続税がかかります。第三者が遺贈を受けた場合には、法定相続人に対し、納める相続税の2割増しの税金が課せられます。

また、遺贈や死因贈与で個人ではなく法人が財産を引き継ぐ場合には、相続税ではなく法人税がかかります。

しかし、遺言書を作成し、相続税申告期限までに特定の寄付先(寄付金控除の対象団体)に寄付をした場合は、相続財産に含まれないため、課税されません。

まとめ

自然災害の際にクローズアップされる寄付ですが、以前に比べ、情報や手段が増えて、スマートフォンですぐにできるようになりました。この他にも、ポイントでの寄付や、継続寄付サービス、クラウドファンディングによりプロジェクトごとに予算を決めて寄付を集める仕組みなどもあります。

寄付したことだけで満足することなく、その使い道がどうなったのか、継続して見守ることも大切です。

これを機に、自分の想いを届け、応援する方法として、寄付との向き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。

 

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