第60回 チャットGPTについての包括的なレビュー③
情報セキュリティ連載
試される人工知能「チャットGPT」の実力
ここ2カ月の間に生成AIを取り巻く環境が大きく変化しました。
まず、Googleも生成AI「Bard」(和訳:吟遊詩人)をリリースしました。リリース当初は英語のみの対応でしたが、1カ月もせずに日本語、韓国語に対応するようになりました。
現状、生成AIは賢い検索ツールという肯定的なイメージから宿題を肩代わりしてしまう等、触らせたくないという悪いイメージがあります。これは、生成AIを具体的に操作するきっかけがなく、周囲で起きた情報に左右されている状況からだと思います。
そこで今回は生成AIの1つの使い方をご紹介したいと思います。
生成AIがどんなものでどう使用していけばいいかの提示になれば幸いです。
1 生成AIに仕訳を生成させる例題
使用する生成AIはGoogleが開発したBardです。会計データのセットを流し、このデータから出来上がる仕訳の答えを教えます。それを元に新しい会計データを流した場合、どのような答えを出すかを検証しました。
生成AIは下記の処理方法で指示すると回答を作成します。
① 処理してほしい内容の例題とその回答をセットで提示。
今回は、例題として3月の売上の発生と入金の一覧表(エクセルデータ)とその表から起票される仕訳(エクセルデータ)を提示します。
② ①を提示後、生成AIに回答してほしい例題を提示します。
例題は4月の売上の発生と入金の一覧表を提示します。
では実際の流れです。
① 下記を生成AIへ文章で入力します。下記のBardへ入力する文章の表は実際のエクセルデータからコピーし貼り付けます。(※)
生成AIへの指示:(下記が実際Bardへ入力する文章です)
下記は当社の売上の発生と入金の一覧表です。

上記のデータから下記の仕訳データができます。

② ①の問題と回答のセットを提示したので、次に①の問題と同様の表を提示し、仕訳を生成するように指示します。
生成AIへの指示:
上記の条件を踏まえ下記の売上の発生と入金の一覧表のデータから仕訳を生成してください。取引日は2023/4/30です。

下記が生成AIの回答です。

生成された仕訳は正解です。支払手数料も振替仕訳が生成され預金もマイナスされての金額です。
2 なぜこのようなことができるのか
生成AIは膨大な量の問題と回答がセットになったテキストデータから学習しています。その学習の中に簿記のデータも入っており、簿記の一般的な知識、例えば裏書手形の一連の流れについて聞いても正しい回答をしてきます。
驚くのは、生成AIが会計ソフトのデータ形式の知識も持っていることです。
生成AIへ上記仕訳を会計ソフトの形式へ並べ替えるよう指示したところ、並べ替えたのは従来のコンピュータは人間の言葉をコードという形に変換することでコンピュータは動作しますが、生成AIは人間の言葉の意味を理解しているため、曖昧な表現も理解し回答できるようになっています。
そのため、生成AIは問題と答えのセットがあれば類似した問題から答えを導くことができるため、文章の要約や数学など式がある問題の回答ができます。
3 生成AIの認識が人間の常識を覆す事例も
さらに将棋や囲碁の世界では生成AIが、プロが思いつかないような手を編み出し新たな戦法としても確立されてきており、将棋や囲碁の常識を変える存在となっています。
生成AIはすでに技術として生み出されてしまいました。もうこの技術を無いものにすることはできません。
会社や学校などで生成AIに対するルールを作成し、どう運用していくかを議論すべき時期にきていると思います。
今回の記事が、身近な業務でのテスト、そこからルールづくりをするきっかけになれば幸いです。
(※)Bardへ貼り付けるエクセルデータはエクセルの必要な部分をコピーして貼り付けていただければBard側が行と列を認識します。
記事上の問題と回答は枠で囲まれた形で表記されていますが、実際貼り付けるとスペースで区切られた形になります。

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