ゴールベースアプローチとライフプラン
クローバー通信 No.214

「貯蓄から投資へ」の促進に向けた「資産所得倍増プラン」の提唱などを受け、あらゆる世代で資産形成・資産運用に対する意識が高まっています。
来年からは、NISA制度の拡充も決まっています。
今まで金融機関では、その時販売したい商品を提案されることが主流でしたが、国が主体となり安心して投資に取り組めるよう「顧客本位の業務運営」に舵を切っています。近年、金融業界で注目され、これからの資産管理に必要となるであろう「ゴールベース・アプローチ」について取り上げます。
1 ゴールベースアプローチとは?
ゴールベースアプローチ(Goal Based Approach = GBA)とは、資産運用やライフプランニングにおける考え方の一つです。
最初にゴールと、ゴールに到達するための目標(いつまでに、いくら必要か)を設定し、そこから逆算して必要な投資金額・運用期間・目標運用利回りなどを割り出し、適切な運用計画を導き出します。単に資産を増やす事を目的とするのではなく、人生で実現したい具体的な目標を定め、それを達成するために必要なお金を準備していく、資産運用や収支を管理する方法です。
米国では、80年代に入り年金制度が、確定給付年金(DB)から企業負担の少ない401kなどの確定拠出年金(DC)へとシフトし、退職後の年金資金の運用や資産取り崩しのタイミングなどを個人が決めていく必要性が生じてきました。
このような状況の中、金融機関も株式や投資信託などの金融商品の単なる販売から、金融アドバイスやコンサルティングなど資産管理に関わるサービスを提供するようになり、そこで生まれた新たな資産管理の手法がゴールベースアプローチで、今ではこの考え方が主流となっています。
30年の差はありますが、現在の日本の状況とよく似ており、日本でもゴールベースアプローチの手法が広く浸透していくと思われます。
2 なぜゴールベースアプローチが必要なのか
行動経済学の観点から事例を見てみましょう。
事例1)
低リスクで運用したいと思っている人が、相場が過熱している時に知人が大儲けしているのを見て、ついハイリスクな投資をしてしまったり、長期で運用を行っている人が、短期的な急騰・急落による損失に耐えられずに思わず売却してしまう。
➡人は将来得られる価値よりも、今すぐ得られる価値の方を過大に評価する傾向 にあり、合理的ではない行動をとってしまいがち
事例2)
封筒に子どもの名前を書いたラベルを貼って貯金すると、貯金率が大きく上がる。反対に、ギャンブルで得た収入は散財しやすい。
➡同じお金でも、お金に名前(目的)を付ける事で、自分の意識や優先順位が 高まる
より具体的に目標設定し、計画を立てる事が達成の近道となります。
3 ゴールとは?
目標を設定し、優先順位をつけましょう。
「子どもが欲しいもののために、おこづかいの中から計画的に貯めていく」のもゴールベースアプローチの手法です。
年代を問わずあらゆる層に当てはまります。
NEEDS 必要な物
自動車の購入
住宅購入資金
子どもの教育資金
将来的な老後への備え
リフォーム資金
シニア住宅や施設への住み替え
老後に向けた退職金の運用
など
WANTS 欲しい物・楽しみ

自分への投資
海外旅行
自動車の購入
リフォーム資金
ゆとりある老後に向けた退職金の運用
など
まずは必要な物[NEEDS]を優先に。必要な物の場合は、確実に資金を準備したいので、リスクを抑えた運用を。
楽しみ[WANTS]の場合は、運用結果に合わせて、予算や実行時期を調整することができるので、多少リスクをとっても良いでしょう。
4 ゴールベースアプローチの手順
将来のゴールは複数あります。それぞれの目的ごとに、それぞれに適した運用プランがあります。
ゴール(目標)を決める
いつまでに何をするか
ゴールに向けたプラン策定
ゴール実現までの期間
必要金額の目安
初期投資の有無
現在の資産状況
今後の収入の見通し
リスク許容度、など
商品選択・実行
どのくらいの利回りで運用すればよいのか
ゴール実現までの期間
リスク許容度に合わせた資産配分
運用商品の決定
定期的な運用状況の確認
想定した運用プランと現実のズレはないか
必要に応じて資産配分・投資期間・金額の見直し
想定利回りは、株式や債券、不動産投資信託(REIT)など複数の資産クラスを投資対象とし、リスク許容度にあわせて資産配分する事で、設定していきます。
ゴール達成の方法は一つではありません。資産規模・期間、目標の達成率により、別のプランを選ぶこともできます。
具体例) 20年後の老後資金 2,000万円
① 預金でコツコツと実現する
毎月積立83,333万円 × 240カ月 = 2,000万円
資産運用による実現の可能性
② 毎月積立投資(4%で運用)83,000円 ➡ 15年で達成
達成期間の短縮
③ 毎月積立投資(4%で運用)83,000円 ➡ 20年後
約3,000万円 目標超過金額で、ゆとりある老後が可能
④ 毎月積立投資(6%で運用)44,000円 ➡ 20年後
約2,000万円 月額負担を軽減
⑤ 毎月積立投資(6%で運用)20,000円 ➡ 30年後
約2,000万円 期間を延ばし月額負担を軽減
まとまった資金があれば、初期投資の運用で資産を増やし、積立なしでもゴールに達成する事も可能です。反対に、初期投資および積立額が少額でも、運用期間を延ばすことでゴール実現の達成が可能になります。
退職後の資産の取り崩しにおいても、ゴールを定めて資産運用する事で、引き出せる期間を延ばしたり、引き出せる金額を増やすプランも検討できます。
まとめ
コロナによる経済の停滞、急激な円安とインフレ、漠然とした不安を抱いている方は多いでしょう。低金利が長く続き、銀行に預けておけばよいというわけにはいかなくなりました。老後2,000万円問題を契機に、以前より自助努力による資産運用が求められています。
最近ではゴールベースアプローチを取り入れる金融機関やアドバイザーも増えていますが、サービスの内容は様々です。自分の保有資産と考え方に適したサービスか確認しましょう。
基本となるのは、ご自身・ご家庭のライフプランです。どんなライフイベントがあり、何をしたいのか、その為にはいくらかかるのか、洗い出して見える化すると良いでしょう。その上で、必要以上に投資を怖がらず、資産形成にゴールベースアプローチの考え方を取り入れてはいかがでしょうか。
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