第37回 テレワークの現状〜分かれる評価
情報セキュリティ連載
第37回 テレワークの現状〜分かれる評価

緊急事態宣言が発令されてから約6カ月が経過し、テレワークについて企業の方向性が現れてきました。今回は、テレワークの今後がどうなっていくのかをみていきたいと思います。
10月7日付日本経済新聞に『テレワーク 分かれる評価』という記事が掲載されています。
記事内のアンケートに「仕事の生産性が上がったと思うか」という質問があり、回答は下記のようになっています。
上がった … 31.2%
変わらない … 42.2%
下がった … 26.7%
【回答理由】
上がった

○ 移動時間が減り作業時間を確保しやすくなった
○ 業務を中断される機会が減った
○ 静かな環境で集中しやすい
○ 会議への参加・準備が減った
○ 共有ソフトで情報交換の効率が向上
下がった

○ 同僚や部下、上司とのコミュニケーションがとりにくい
○ 私生活と仕事の切り替えが難しい
○ チームの仕事の進行状況が把握しづらい
○ 情報機器・通信ネットワークが整っていない
○ 育児や家事などとの両立が難しい
1 アンケートの結果から判明すること
アンケートを通して見えてくるのは、テレワークを推進する企業と元の形に戻ろうとする企業に分かれている傾向です。
元に戻る企業の回答としては同僚などとのコミュニケーションが取りづらい、部下が仕事をしているか心配という対人関係の回答があります。
原因がWebを利用してのコミュニケーションが取りづらいというのが主な回答ですが、これは少し違う気がします。
自分が所属する部署でも、毎朝のミーティングではテレワーク者は米Google社が提供するGoogleMeetを利用しています。利用方法としてはWebカメラをオンにして表情をお互いに確認しながら、また必要に応じて資料の画面共有を通じてのミーティングです。
最初はやりづらさもありましたが、数カ月経った今では業務中に連絡手段としてすぐにGoogleチャットでチャット、GoogleMeetを立ち上げ会話をすることが浸透しました。
やはり、必要に迫られると社員は必然的に覚えてきます。また、苦手な人へは慣れている誰かがすぐ助けに入るようになっており、業務の支障になるコミュニケーション不足はほぼ生じていません。
やはり、ツールの問題よりも、できない・難しいというマイナスの心理面がテレワーク導入を阻害してしまっている要因の根底にあるように思います。
すべての業務がテレワークに置き換わりはしませんが、確実に変更できる業務がたくさんあります。記事にも書かれていますが、テレワーク推進企業は業務の一部に取り込んで出社とテレワークを併用できるようにしている模様です。
2 テレワークを推進する企業はなぜ推進するのか
テレワークを推進する企業はなぜ薦めるのでしょうか。それは「機会損失」を防ぐことにあります。
リクルート研究所が出しているレポートによると、10年ごとの労働所得は、2005年370万円、2015年355万円、2025年341万円と減少傾向にあり、平均所得額が20年のうちに20万円も下がっています。
これは、日本の人口減から生じる労働不足と、それに伴う市場の縮小という2つに起因しています。
3 テレワークは機会損失を防ぐ
テレワークはこの機会損失を防ぐ2つの効果を持っています。
効果1) 労働力の確保(労働力不足の防止)
効果2) 地域経済の活性化(市場縮小の防止)
テレワークは出社という物理的制約を取り外します。結果として労働者の時間的・距離的制約を外します。
これにより、時間的制約の強い育児や介護をしている人の労働力を確保しやすくなりますし、首都圏でしか供給されていない仕事もどこからでもできるようになります。どこからでも仕事ができるということは生活地域を変更する必要もなく、地域経済の活性化につながります。テレワーク者の時給は首都圏に近い料金で物価は地元の価格のため、必然的に購買力は向上する傾向にあるようです。
今後、ますます労働人口減は広がっていくことは明らかです。まだ数は少ないですが地方自治体によるサテライトオフィスのようなテレワーク社員用の建物などのインフラ面の供給が始まっています。地方と首都圏を結ぶビジネスも本格的に必要になってくるでしょう。
現状、仕事内容のすべてがテレワークでできるわけではないのが主流です。それも必要に迫られテレワークにあった形での仕事のやり方に変わっていくように思います。
テレワークを推進する企業は10年ほどで労働人口減がもたらす機会損失を察知しているため、テレワークに力を入れています。
テレワークはGmailの無料アカウントさえあればスタートできます。まずはテレワークがどういうものかを知ることが今後の会社を変えていきます。10年後を見据えてはじめてみましょう。
《参考文献・出典》
•日本経済新聞2020年10月7日 朝刊3面『テレワーク 分かれる評価生産性「向上」31%「低下」26% 本社調査伊藤忠 オフィス回帰日立 継続で多様性』
•リクルート進学総研HP

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