悪魔のささやき

2020年PB黒字化撤廃?

会長政府は平成32年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)の黒字化を目指す目標の撤回を含め、財政健全化計画を見直す検討を始めた。見直しの背景は、税収伸び悩みで目標達成が難しくなる中、無理に緊縮財政を続ければ、デフレの長期化や一層の財政悪化を招きかねないとの危惧があるからである。

藤井内閣官房参与は「PB黒字化は手段にすぎず、アルゼンチンやギリシャを例に、PB改善に向けて歳出削減や増税に踏み切れば、景気が冷えて税収が減り、かえって財政が悪化するという。

一方、本年4月24日夜、都内で「財政と民主主義」と題した東京財団主催のフォーラムが開かれ、登壇した6人の研究者が「日本は30年近くかけて財政赤字を累積させた。これを50年かけて返すとしても低金利がずっと続くわけではない。どうするつもりか」と共通の政治への懸念を示した、と報道されていた。

悪魔のささやき

4月5日の日本経済新聞のコラムでは「財政再建をめぐり、これまでタブー視されてきた悪魔のささやきが広がっている」との書き出しで絶対に避けなければならないと考えられてきた債務不履行、つまりデフォルトに踏み切る状況だという囁きである。デフォルトには二つあり、一つは典型的な借金棒引きである。もう一つはインフレ誘発による実質的な債務負担の軽減、「広義のデフォルト」である。

昨年の6月1日の消費税増税延期表明以来コラムにもある通り日本の財政状態を懸念する高名な学者が永久債、ヘリコプターマネー、インフレによる過剰債務解消などを日本政府へ提案している。シムズ理論などは財政再建を増税せずにインフレによって実質国債債務を減価して財政負担を減らそうというもので、今までの財政再建政策とは真逆の政策が提案され支持されているのである。

インフレは悪か

インフレと云えば、ハイパーインフレに見舞われたドイツでも次のような記述がある。

「もっとも示唆に富むのは、1921年の数字だ。その年の倒産件数をみると、マルクの下落時に倒産が減り、マルクの上昇時に倒産が増えていることがわかる。倒産件数が最も多かったのは845件を記録した春で、マルクが最高値をつけた時だった。しかし、11月には倒産件数は最小になり、150件まで減った」

「ドイツの企業の大半は特殊な理由から現状に満足していた。…民間企業は1923年の危機のさなかでも極めて低い利率で資金を借りられた。…急速な貨幣価値の下落で返済金の実質的な価値は元の借入額を下回っていた。…事実上借りた金は返さなくて済む状態だった」

つまりハイパーインフレでも倒産の減少や、借入金の実質免除という恩恵を受ける人たちもいたのである。

一方、年金生活者や定額収入者など一般生活者は悲惨な状態になった事は誰もが知っている通りである。

日銀の出口戦略

トランプ大統領の出現によって日本銀行がターゲットとしてきた物価上昇目標2%が達成できるのではないかとの推測がちらほら聞かれる。2%目標を達成したら日本銀行は出口戦略を明らかにしなければならない。アメリカのように国債買入れを止め、金利の引き上げに向かうことはできないといわれている。(1997年:資金運用部ショック)

ドイツのように低金利でお金を印刷し続ける、あるいは「悪魔のささやき」に乗り、永久債やヘリコプターマネー政策をとらざるを得ないのではなかろうか。痛みを忘れるためにモルヒネや麻薬に溺れるように。

日経記事
日本経済新聞 2017年4月5日(水)掲載

 

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代表社員 小川 湧三


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