シムズ理論

会長シムズ理論

シムズ理論は昨年11月15日日本経済新聞の「経済観測」のインタビューで安倍首相の内閣官房参与としてアベノミクスに多大な影響を与えた浜田宏一氏が自説の誤りを認めてシムズ氏の理論に触れ「目から鱗」が落ちた、と語って一躍注目されたものである。

シムズ理論の概要は、ノーベル経済学賞を受けているクリストファー・A・シムズプリンストン大学教授が提唱している理論で、氏の「物価水準の財政理論(FTPL)」は国の借金の返済原資が足りない場合、増税ではなく、インフレで借金を「返す」という考えである。

とりわけ、現在のようにデフレ圧力が強い時、金融政策で名目金利はゼロに近づいているから、マイナス金利を含めて一段の利下げには限界があり、政策効果が弱まるため、財政で支援する必要がある、ということである。

異次元の財政政策

昨年6月1日に安倍首相が消費税増税の再延期を表明してから、国の借金が1000兆円を超えGDP比250%になろうとしている世界で突出している日本の財政状況を懸念して、ヘリコプターマネー論や社会保障政策としてベーシックインカム論など消費税増税延期後に起きるであろう日本の財政資金の調達に関連して賛否両論議論が沸き上がってきた。

また、日本の国債の先行きを懸念して三菱UFJ銀行が国債特別資格を返上したことも大きな話題をさらった。

このような議論の後と云おうか、議論の最中と云おうか新たな理論として「シムズ理論」が急速に沸き上がってきたのである。

安倍首相は消費税再延期にあたって、経済成長によって税収を増やし財政再建を実現するとして、いわゆる「二兎を追う政策」を強調していた。

しかし、今回の「シムズ理論」は増税せずにインフレによって国の債務を実質目減りさせ借金をチャラにする政策であり、このような政策を内閣府参与の浜田宏一氏が高く評価したところにこの問題の深刻さがあると思うのである。

暴落の前に金融の天才がいる

消費税増税再延期表明以後のヘリコプターマネーやベーシックインカム、今回のシムズ理論等日本の財政破綻懸念に対する経済学者や識者の議論を見聞きして思い出すのは、バブル崩壊を研究しているジョン・K・ガルブレイス氏の「バブルの物語」に書かれている「暴落の前に金融の天才がいる」「輪をかけた『てこ』の再発見」のフレーズが思い出される。

「暴落の前に金融の天才がいる」というフレーズでは『投資する大衆は、金融の才のある偉人に魅惑されその虜になってしまう。その金融操作が非常に大がかりであること、巨額の金がかかわっている以上それを動かす人の頭脳も偉大であるに相違ないと信じ込んでしまうことによる』と言っている。

「輪をかけた『てこ』の再発見」というフレーズは、「投機のエピソードのすべてに共通しているのは、世の中に新しいものが現れた、という考えがあることである。あらゆる金融上の革新は、何らかの形で現実の資産によって多かれ少なかれ裏付けられた負債の創造を含んでいる。そして、あらゆる危機は、基礎となる支払手段に対して負債が危険なほど多すぎるということに関係するものであった」と書いている。

日銀はインフレを制御しない?

2月27日の日本経済新聞では「次は『異次元の財政政策』か」という論説が出ていた。

アベノミクスの三本の矢の一つとして「異次元の金融緩和」が始まった頃から実質的な財政ファイナンスが始まっているのではないかとささやかれてきたが、「シムズ理論」の登場によって、完全な財政ファイナンスにとってかわられるのではないだろうか。3月7日の日本経済新聞の日本国債特集はこの懸念を端的に表している。

日本銀行はアベノミクスの一環として異次元の金融緩和・QQE、QQE2、ゼロ金利政策と相次いで手を打ってきたが、物価目標2%を達成することができず、日銀の政策遂行能力の限界もささやかれている。

FRBは予想通り3月15日利上げ決定した。2年前に始まった地銀を中心とする金融機関再編は、今年からメガバンクを中心にする金融機関再編が始まった。インフレを勧める「シムズ理論」という天才も現れた。日銀は金利の上昇を抑えインフレを放置するのではなかろうか。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


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