最近の賃料滞納対処事例

第296回 財産承継研究会
最近の賃料滞納対処事例

司法書士・行政書士
星野リーガルファーム代表 星野文仁氏

■滞納賃貸を発生させないための対処法

大家さんにとって賃貸業をするなかで考えておかなければならないことは、借主が家賃滞納した時の対処法でしょう。一旦家賃を滞納してしまうとやがて対処の難しい額になり全ての家賃の回収は難しくなってしまいます。そのため確実に回収するためには事前の対応が必要になります。

家賃を滞納させにくくするには次のようなポイントがあります。

◎連帯保証人の選出
◎与信調査
◎定期的な現地確認

特に定期的に現地を確認することで借主の生活状況をチェックする事が重要です。債権回収にはスピードとしつこさが必要になります。賃料が溜まってしまう前に対処することが大切です。

■大家さんに有利な賃貸借契約書の作り方

大家さんと借主で争いになった時、裁判では借主が有利になる傾向があります。

そのため大家さんは争いになった時に有利になる賃貸借契約書を作成しておくと良いでしょう。

1.借主が契約を履行しない場合には事前に催告しないで契約を解除する無催告解除。これを入れない場合借主に催告し猶予を与えないと解除は出来ません。

2.裁判を起こす場所を決めておく合意管轄の定め。借主が遠くへ越しても、大家さんの所在地又は物件所在地を裁判の場所に出来ます。

3.賃貸借契約終了後の残留物の処分権は貸主に属することを明記する。但しこれを明記しても訴訟では認められないことがほとんどですが、圧力にはなります。

以上3点をおさえて作成します。

■滞納家賃が発生した場合の対処法

賃貸物件で滞納が発生した場合には、まずすぐに連絡をして支払いの遅れを見逃さないことです。また保証人にも請求をし、保証人からも言ってもらうことで今後の未納抑止効果にもなります。

また直接訪問し、状況を確認することも大切です。

■司法書士が出来る家賃回収の方法

司法書士に家賃の回収を依頼する場合、滞納家賃が140万円以下であれば代理回収が可能です。

◎内容証明

手軽に相手にプレッシャーを与えられ、訴訟時には証拠にもなります。しかし内容証明は受け取り拒否が可能であり、法的執行力がありません。

◎支払催促

簡易裁判所書記官に申し立てて発せられます。相手からの異議がなければ、判決等が出されるので強制執行の申し立ても可能になります。

◎通常訴訟

訴訟の目的や上訴に関する制限はありません。額が小さくても、通常の訴訟手続きであるため複数の論点にも対応でき、厳密な審理がなされます。

■司法書士による借家の明け渡し

また賃借人の立ち退き等を依頼する場合には、賃借している建物(部屋)の固定資産評価額の2分の1が140万円以下であれば司法書士による代理交渉や訴訟が可能になります。この場合に滞納家賃は付帯請求とされ、訴額には含まれないので金額に関わらず代理回収が可能になります。

借家の明け渡しのためには、

①強制執行を作動させることの出来る文書の取得
②建物明け渡しの強制執行の手続き

が必要です。

①強制執行可能になる文書は、通常訴訟により取得出来ます。
②建物の明け渡し強制執行手続きは、不動産所在地を管轄する地裁の執務室にて申し立てをします。

もし家賃滞納が発生したとき、対応として弁護士に依頼するよりも司法書士にすることで費用を抑えられることも多いようです。しかし実際に多額になってしまった家賃を回収することはほとんど出来ません。

大家さんとしては出来るだけ早めの段階で明け渡しを考えるのが賢明と言えそうです。

 

♥ 次回の財産承継研究会の開催日 ♥

2013年9月27日(金) 18時30分~20時30分

☎044-811-1211(石井・駒まで)

お申し込みは こちら

 


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