これからの相続税対策の考え方

第295回 財産承継研究会
第1部「これからの相続税対策の考え方」

株式会社LR小川会計 小川 泰延

▪平成25年度の税制改正

平成25年度の税制改正は、自民党政権で行われましたが、相続税については基礎控除の引き下げや税率区分の改正など、民主党政権の下で行われた改正内容と変化はありません。

基礎控除が引き下げられることで今まで課税対象にならなかった被相続人の方々が相続税の対象になってしまうという点が注目されていますが、実際は現状でも相続税の対象になる金額の相続財産をお持ちの方への影響が大きいと思います。

相続税対策としては、資産管理法人の活用と、生前贈与の活用というスタンスが従前同様に基本となるでしょう。

▪相続税対策としての生前贈与

生前贈与の活用(税制改正後の税率適用)

◎相続財産350,000千円、基礎控除48,000千円
(相続人…配偶者1名、子2名)

◎10,000千円(5,000千円ずつ2名に)を生前贈与した場合

◎相続税の減少額3,500千円

◎贈与税の納税額970千円

◎節税額2,530千円

税率で比較すると、10,000千円の財産の移転で相続税35%(限界税率)、贈与税9・7%(実効税率)になるので、最終的に2,530千円(10,000千円×(35%ー9・7%))の節税になることがわかります。

▪暦年贈与の積み重ねによる節税効果

※例①

前述の具体例で暦年贈与した場合(15年間)

【節税効果】

◎相続財産の減少額150,000千円

◎相続税の減少額47,700千円(74,700千円ー27,000千円)

◎贈与税額14,550千円(970千円×15年間)

◎節税額33,150千円

※例②

100万円を2名に暦年贈与した場合(15年間)

【節税効果】

◎相続財産の減少額30,000千円

◎相続税の減少額10,500千円

◎贈与税額0円

◎節税額10,500千円

財産の金額、推定相続人の人数や資金の状況等によって異なりますが、贈与税を納税してでも相続財産の移転(減少)のスピードを速めていく方が節税効果が大きいことがわかります(もちろん税率の比較で贈与税より相続税で納税した方が有利な場合もあります)。

相続財産の状況や相続対策にかけられる時間(年齢)等の要素を考慮して生前贈与を活用していくことが必要です。

▪建物を自己資金で建てるか、借入をして建てるか

「借入をして賃貸物件を建てると相続税が安くなる」ということが言われることがありますが、自己資金で建物を建てる場合と借入をして建物を建てる場合で相続財産には差はありません。

自己資金で建物を建てた場合、不動産の収益はキャッシュとして貯まっていきます。借入をして建てた場合は、キャッシュとしては残らずに借入金の返済にまわります。キャッシュが増える分、自己資金で建てた方が相続財産が増えるイメージを持たれるかもしれませんが、借入金の返済もマイナスの財産を減らすということで相続財産を増やす結果になります。

借入をした場合は建物から生み出されるキャッシュの使い道がまずは借入金の返済に限られてしまいます。しかし、自己資金で建てた場合は、そのキャッシュの使い道が自由になるので、その後の資産移転にもすぐ対応できるメリットがあります。

▪相続の意味合い

相続というのは、遺す人(終活)と引き継ぐ人(新たな取得)でそれぞれのライフプランでの位置付けが違います。

相続税を少なく済ませるということも重要ですが、相続税対策というのは引き継ぐ人のコストの問題です。生前贈与等の相続税対策を考えるにあたっては、一方で残す人の今後のライフプランの視点(如何に人生を安心して全うできるようにするか)を忘れてはいけないことを付け加えておきます。

 

♥ 次回の財産承継研究会の開催日 ♥

2013年7月26日(金) 18時30分~20時30分

☎044-811-1211(石井・駒まで)

お申し込みは こちら

 


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