国際協調の難しさ
私達は、今まで数多くの試練に遭遇し、その試練に多くの人が知恵を出し合い難局を乗り切り、長期的に社会はより良い方向で発展してきましたが、先月紹介した「全体・部分最適」、「長期・短期利益」の視点から最近の報道を見ると、「部分・短期」を重視した判断が多いような気がします。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖
私が気になるのは、関税に関するニュースです。近年、保護貿易から自由貿易へと変遷してきたことを考えると、議論はあるものの保護貿易(関税)のメリットよりもデメリットが多いと考える者が多数を占めているのではないでしょうか。保護貿易は、有事における安全保障目的や自国産業の強化等、限定的なメリットはありますが、その場合も「全体・長期利益」を冷静に検討する必要があると思います。
一方、完全な自由貿易が行われると、価格に敏感な製品については人件費が安い国へ生産シフトが起こり、結果、サプライチェーンの一国依存により、安定供給されない懸念が増大します。コロナ禍において、マスクや消毒液が店頭から消えてしまったことは、記憶に新しいと思います。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖
このように、自由貿易を前提としながらも、各国の事情を踏まえ、長期かつ世界全体の利益最適化(全体最適)を図るため、国際協調が重要視されてきたのですが、最近は、各国が雇用確保のための産業保護、食料・エネルギーの確保を優先する部分最適を主張する局面が多いと思われます。地球温暖化が象徴する環境問題、自然災害、エネルギー、食料問題等、様々な分野で識者たちが長年議論を重ねて構築してきた国際協調の枠組みが軽視され始めていると感じているのは私だけでしょうか。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖
自分優先や自国第一主義で考えること(部分最適)はある意味自然で、政治家がそのような政策を主張するのは心地よい言葉に聞こえ、国際協調を第一に考えるのは難しいことです。
しかし、世界貿易機関(WTO)、パリ協定等、様々な国際協調は、過去の過ちを繰り返すことなく、長期的な利益を重視して取り組まれてきたことを忘れてはなりません。
税理士法人LRパートナーズ
川崎事務所 所長 山下 功起

神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら
経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートいたします

“国際協調の難しさ” に対して1件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。