第79回 生成AI界の新星「DeepSeek」その実力、戦略、技術、そして潜むリスク

情報セキュリティ連載
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2025年1月27日、中国のスタートアップ企業「DeepSeek(ディープシーク)」が低コストの生成AIを開発したことを受けて、ニューヨーク株式市場は、ハイテク関連銘柄が多いナスダックの株価指数が先週末と比べて3%を超える大幅な下落となりました。投資家の間でアメリカの大手IT企業のAI分野での優位性が失われるという懸念が広がったためです。

このように、DeepSeekの登場は、株式市場に大きな混乱をもたらしました。しかし、その影響は株価だけにとどまりません。DeepSeekは、AI技術の民主化を促進する可能性を秘めている一方で、セキュリティリスクという新たな課題も浮上させています。

1 DeepSeekの技術力:低コストで高性能なAIモデル

DeepSeekの強みは、低コストで高性能なAIモデルを開発できる点にあります。通常、大規模なAI開発には莫大な資金と高性能なコンピューターが不可欠です。しかしDeepSeekは、オープンソースのAIモデルを基盤に、独自の技術を組み合わせることで、効率的な開発を実現しました。

オープンソースの活用は、開発コストを抑えるだけでなく、技術的な革新を加速させる効果も期待できます。DeepSeekは、既存の技術を巧みに利用しながら、独自の強みを築き上げているといえるでしょう。

2 DeepSeekの独自技術:MoEアーキテクチャと大規模強化学習

DeepSeekは、Mixture of Experts(MoE)アーキテクチャという技術を採用した大規模言語モデルを開発しています。MoEアーキテクチャは、複数の専門家モデルを組み合わせることで、高い性能と効率性を両立させる技術です。DeepSeekのモデルは、このMoEアーキテクチャと大規模な強化学習を組み合わせることで、推論能力を大幅に向上させています。

また、DeepSeekは、DeepSeek-R1という推論に特化した軽量モデルも開発しています。DeepSeek-R1は、高速な推論速度と高いプライバシー保護性能を両立しており、様々なアプリケーションでの活用が期待されています。

3 梁文鋒(リャン・ウェンフォン)氏の戦略:AI開発と投資の融合

DeepSeekの創業者、梁文鋒氏は、AI開発者であると同時に、優れた投資家でもあります。彼は、株式投資で得た資金をAI開発に投入し、DeepSeekを急成長させました。

梁氏の戦略は、AI技術の開発と投資を組み合わせることで、相乗効果を生み出すことを目指しています。AI開発には多額の資金が必要ですが、投資によって得られた資金を再投資することで、更なる技術革新を追求できるのです。

4 DeepSeekの展望:汎用人工知能(AGI)の開発

DeepSeekは、汎用人工知能(AGI)の開発を目標に掲げています。AGIとは、人間のように多様な知的作業をこなせるAIのことです。AGIの開発は、AI分野における究極の目標の一つであり、DeepSeekがAGI開発に成功すれば、その影響は計り知れません。

DeepSeekは、AGI開発に向けて、様々な技術的な課題に取り組んでいます。オープンソースの活用や投資戦略に加え、優秀な人材の獲得も積極的に進めており、その本気度が伺えます。

5 DeepSeekがもたらす未来:AIの民主化と新たな競争、そしてセキュリティリスク

DeepSeekの登場は、AI技術の民主化を促進する可能性があります。高額な費用が必要だったAI開発が、より多くの企業や個人にも可能になることで、AI分野の競争が激化し、技術革新が加速するでしょう。

また、DeepSeekの成功は、AI分野における新たなビジネスモデルを示唆しています。オープンソースの活用や投資戦略を組み合わせることで、スタートアップでも大規模なAI開発に参入できる道が開かれるかもしれません。

しかし、DeepSeekの利用に伴うセキュリティリスクも無視できません。中国政府との関係性やデータセキュリティの懸念から、各国政府や企業はDeepSeekの利用制限に乗り出しています。

日本政府は各省庁へDeepSeekの使用を控えることを通知、韓国でも、政府機関や民間企業でDeepSeekの利用を制限する動きが広がっており、台湾でも、行政院が公的機関でのDeepSeekの利用を全面的に禁止しています。

これらの動きは、DeepSeekの利用拡大に伴うセキュリティリスクの高まりを反映しています。DeepSeekを利用する際は、これらのリスクを十分に理解し、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

《参考文献》

•『「ひとりユニコーン」の時代(DeepInsight)』2025年2月8日付 日本経済新聞
•『ディープシーク利用注意 政府、各省庁に(短信)』 2025年2月7日付 日本経済新聞
•『DeepSeekの低コスト化手法を徹底解説、MoE・H800活用・GRPOの効果』
 日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/03084/013000006/)

 

 

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