第78回 進化する生成AI  専用アプリの役割は終わるのか?

情報セキュリティ連載
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前回の記事では、生成AIと従来のアプリの関係性についてお話ししました。その中で、汎用性を持つ生成AIが、特定の機能に特化した専用アプリよりも高い能力を発揮し始めている、という現象をご紹介しました。

1 驚異的な進化を遂げる生成AI

生成AIへの理解が深まり、その処理能力が向上するにつれて、私たちは、専用アプリに頼る頻度が減ってきています。従来、専用アプリは、人の手では困難な大量の処理を効率的に行うために利用されてきました。例えば、形式やデータがバラバラな資料をまとめる作業は、以前は手作業が中心でした。

しかし、生成AIは言語だけでなく、画像、動画、音声など、多様な形式のデータを学習することができます。2012年に話題になった「Googleの猫」の事例(2012年当時、動画から猫シーンを認識させるようなことは、ほぼ不可能とされていました。Googleの研究機関が、動画の内容をAIに理解させることができたとして、当時話題になりました)のように、AIは眠ることなく学習を続け、10年以上の歳月を経て、その能力を大きく開花させています。

2 生成AIによるデータ処理革命

このような進化を遂げた生成AIに、データの趣旨や事例を伝え、データ作成を依頼すると、意図した回答を容易に抽出することができます。バラバラのデータが一定の規則に従って整理されれば、後はエクセル関数などを用いて、必要な形式に加工することが可能です。

最近の業務では、従来のソフトウェアに依頼するよりも、生成AIに直接指示して作業を行うケースが増えています。例えば、レシートのデータ処理を考えてみましょう。10%と8%の消費税が混在し、店舗ごとに表記も異なるレシートの情報を、少し前の生成AIでは、取引日や金額、内容までは抽出できても、消費税の詳細な判別は困難でした。

3 Gemini 2.0の登場と劇的な変化

しかし、2024年12月にGoogleが発表した生成AIモデル「Gemini 2.0」によって、状況は一変しました。このモデルに消費税の詳細な抽出を指示したところ、ほぼ間違いなく(精度でいうと40〜50枚に1枚程度の失敗)抽出できるようになったのです。

生成AIとエクセル関数を組み合わせることで、市販品よりも高い精度で、かつ既製品では難しいカスタマイズも容易に行えるようになりました。さらに、「Gemini 2.0」には、回答の過程や質問の意図を説明する機能も追加され、生成AIがどのように質問を理解し、回答を出力しているのかも把握できるようになっています。

 

4 既存サービスへの影響と未来への展望

この進歩は、現在展開されているサービスにも大きな影響を与えるでしょう。経理代行サービスや会計ソフトメーカーが提供する領収書アップロードサービスも、生成AIによってスピードと精度で凌駕される可能性が出てきました。

生成AIの開発は、コンピュータ自体を生成AIが制御する「生成AIエージェント」と呼ばれる段階にまで進んでいます。マイクロソフトがWindowsを動かす生成AIの開発を進めているのは、まるでパソコン自体が不要になるかのような、自爆行為のようにも見えます。しかし、開発競争は激化しており、生成AIがPCのシェアを奪い合う時代が来るかもしれません。

サンフランシスコでGoogleの自動運転車が街中を走り回るように、人間が操作していたシステムを生成AIが動かす未来が、着実に近づいています。

5 これからの時代に必要なスキル

生成AIの急速な成長を踏まえると、これからは生成AIと対話するスキル、すなわちプロンプトの書き方が重要になるのですが、生成AIは日々進化しており、人間のような癖も感じられるため、その癖を踏まえた対話スキルが非常に重要になります。

生成AIの懸念されていた学習データの流出問題も過去のものとなっています、一方、教育現場から労働環境まで、様々な環境変化が起きています。

従来の力では対処できないものも、この生成AIと対話できるスキルを身につけることで、既存のサービスやアプリケーションの活用状況を大きく変えることができ、結果変化の早い時代に対応ができるようになります。

 

現状、生成AIを利用するかしないかではなく、どう活用するかが重要になっている状況です。

生成AIについて疑問や不明点、お困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

《参考文献》

『アンソロピック3100億円調達へ 米生成AI新興』 

 2025年1月9日掲載 日本経済新聞

『AI時代を導く教育論 「任せて任せず」常に目配り』

 シリコンバレー支局 渡辺直樹(経営の視点)
 2025年1月13日掲載 日本経済新聞

 

 

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