退職給付金制度とリタイアメントプランニング
勤務先の退職金制度や退職給付金の受け取り方について退職して初めて知るケースが多いようです。知らないで損をすることがないように、退職金と年金の受け取り方について確認していきましょう。
1 退職給付金制度
退職に伴う給付金制度には、大きく分けて「退職一時金」と「企業年金」があります。約8割の企業では退職金制度がありますが、従業員規模が少ない場合は、退職一時金のみ・退職給付制度がない場合もあります。
[退職一時金制度]
従業員が定年や自己都合で退職する際に、企業が一時金として支払う制度。一般的に、雇用契約または就業規則による退職金規程で定められた内容に基づき支給される。
[企業年金制度]大企業など
確定給付企業年金:
受け取る給付額があらかじめ約束されている企業年金制度。企業が運用責任を負う。
企業型確定拠出年金(企業型DC):
企業が掛け金を出し、従業員が商品や割合を自分で決めて運用していく制度。個人ごとに分別管理され、運用成果によって受け取る年金資産が変わる。
[中小企業などを対象とした制度]
中小企業退職金共済(中退共):
特定退職金共済(各地の商工会議所等の団体など):
どちらも中小企業の為の退職金制度。企業が団体と契約を結び、掛け金を出す。退職時に、退職一時金(原則)が直接従業員に支払われる。
[個人事業主などを対象とした制度]
小規模企業共済:
個人事業主や小規模企業の会社役員の為の退職金制度。掛け金は1千円~7万円で設定でき全額所得控除の対象。加入年齢の制限がない。
個人型確定拠出年金(iDeCo):
公的年金の上乗せ制度。個人が掛け金を出し、商品や割合を決めて運用していく制度。自営業者や企業年金のない会社員・専業主婦も加入できる。
2 退職給付と公的年金 受取時期と受取方法
受取方法 比較 一時金 vs 年金
3 受取時の税制
「退職所得控除」・「公的年金控除」を最大限活用する
退職所得控除
退職所得とは、勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、退職手当のほか、企業年金の退職一時金(脱退一時金)と選択一時金も含まれます。
退職所得の課税額の計算では、勤続年数に応じた金額が給付額から控除でき、長期勤続者ほど退職所得控除の額も大きくなります。また他の所得と分離して税額を算出する「分離課税」の為、一般的に税負担が軽減されます。
退職所得 = (退職金 - 退職所得控除)×1/2
退職所得控除:
20年以下 40万円 × 勤続年数
20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)
公的年金等控除
年金収入は雑所得になります。雑所得の計算では、収入金額から経費を差し引いて計算するのが原則ですが、公的年金等を受け取った場合は、収入金額から公的年金控除額を差し引いて計算します。65歳未満と65歳以上では、控除額が異なります。
4 受取時の注意点
◆ 一定期間に複数の退職金を受け取った場合
勤続年数の重複部分の「退職所得控除」は差し引くことができません。
◆ 短期退職手当:役員以外で勤続年数が5年以下の場合
〔退職金 - 退職所得控除額〕が300万円超の部分については、1/2課税が適用されません。
※役員等の中には、法人の役員のほか、国会議員・地方議会の議員、国家公務員および地方公務員が含まれる
◆ 退職一時金と確定拠出年金を一時金で受け取る場合
○
同一年内に受け取る場合、退職所得控除額は、勤続(加入)期間の長い方を適用し、退職所得は合算して計算する
×
先に退職一時金、その後19年以内に確定拠出年金を受け取る場合、勤続(加入)の重複期間の退職所得控除を減額する
◎
60歳で確定拠出年金、65歳で退職金を一時金で受け取る場合は、5年経過している為、減額することなく退職所得控除が適用される
まとめ
税制上有利な受け取り方を検討する事も大切ですが、60歳で一時金を受け取り、 NISA口座を使って上手に運用できる人もいれば、金融商品の勧誘に悩まされたり、手元資金が減っていくのがストレスになる場合もあります。勤め先の年金制度・退職金制度、夫婦間の年齢差、老後資金の準備はできているか、いつまで働くかなど、ライフプラン・リタイアメントプランに基づき、受取時期や一時金か年金形式か、繰上げ・繰下げなど自分で選択しなければなりません。
年金額は、ねんきん定期便や厚生労働省のシミュレーションなど、退職金額は勤務先に問い合わせるか退職金規定等を確認する方法があります。退職金や年金の受け取り方は複雑です。退職を意識するようになったら、セカンドライフをどう過ごしたいかイメージした上で、FPや社会保険労務士など専門家に相談してはいかがでしょうか?
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