「ゆるブラック」
「ゆるブラック」
山梨日日新聞を見ていたら「ゆるブラック」という言葉に遭遇した。初めて接する言葉なので「??」と思って読んでみると働き方に関する言葉だと分かった。先月号で外国人労働者(移民)を取り上げたので、日本人の働き方と関連すると思い取り上げることにした。
「ゆるブラック」はブラック企業の類似語みたいなもので「仕事はきつくなく居心地も悪くないが、スキルアップができずに成長ができないと感じる会社・職場をさす言葉です」(※)とあった。
新聞に実際の相談窓口の様子が書かれていたので紹介する。
実際の窓口相談から
「今の会社、居心地はとても良いんです。でも…」「理不尽な指導なんて受けたことも見たこともないです。でも…」ときて、「でも」の後は「このままでは成長できないんじゃないかって不安なんです」と続くのです。
「ゆるブラック」の特徴は「過度な残業などの長時間労働はないが、成長実感が得られない」
「職場の雰囲気は悪くないが、将来性は感じられない」
「離職率はさほど高くないが、その理由は『楽だから』というものです。」
これらは、記事の中で紹介されていたことである。
感無量
私が育った時は、戦後の何もない時代であった。中学から高校への進学率は半数を切っていて、高校から大学へは数人しか進学しない状況であった。
就職は、どこか就職できる所はないか、職業選択の余地はなく、就職できた職場でそこの職業(手に仕事・技術など)を身に付け自立していかなければならなかった時代であった。
無我夢中で働いた世代から見れば、今の若い世代は、恵まれた環境に育ち、自分の能力によってどんな学校へ行くかも、自分が就きたい、やりたい職業も自由に選択することができる。
前掲の記事の中で、その背景をこう続けている。
「今の若年層世代は、自分たちの親以上の世代とは異なり、リアルに人生100年生きることが分かっています。寿命が延びるということは働く時間が長くなることを意味します。
つまり、彼らは「自分たちは長く働き続ける必要がある、だから社会人として必要とされ続けるためにも成長しなければならない」
という一種の焦燥感を常にどこかで抱いているのです。」とある。
もし、これが本当であれば、家庭や学校では、就職するまで何を教育してきたのであろうか。
地域コミュニティを消滅させ、家族を解体し、家庭を形骸化させ、高齢者は施設に入り終末を迎える。
昔、長寿の先にある桃源郷を目指し、夢見た楽園はどこに消えてしまったのであろうか。
実質賃金が伸びない
岸田政権から官製賃上げが始まった。コロナ明け以後、論説・論文・著書などコロナインフレが始まった中で実質賃金が伸びていないという指摘が多くなされている。
資本主義の弱点は資本の自由を許すと自然増殖を始めアメリカで起きたように99対1の社会ができてしまうことである。独占禁止法や集中排除法などの法整備がなされているが資本集中の加速度的なスピードに追い付かず形骸化してしまった。
人手(労働力)不足・質の劣化
年収200万円以下の人が25%いる(『世相の断面を読み解く』増田辰弘(著))という。
先月号で移民問題を取り上げたが少子化や高齢化による急激な人口減少が止まらず労働力が不足している。
しかし、少子高齢化による人口減少のほかにも先月号で指摘した労働時間の縮小や、ニート・ゆるブラック・高学歴ワーキングプアの言葉で表現される労働力としての質の低下が重なっている。ほっとタイムス316号で取り上げた「PFワーカー」などもこの範疇に入るかもしれない。
持続可能な社会へ
昔、人々は長寿社会の桃源郷を夢見た。それは非現実的な夢だったかもしれないが、改めて持続可能な社会を目指してほしいと思う。
時、あたかも自由民主党の総裁選挙が行われ初めての女性総理が誕生した。
高市総理が就任あいさつで力強く「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて働いて参ります」と述べた。
低迷する日本社会や、実質賃金が伸びないと嘆く日本の若者に送りたいと思う。
(※)2025年7月5日付 山梨日日新聞 「樋口しのぶの人事部LAB.55」
「高学歴ワーキングプア『フリーター生産向上』としての大学院」水月昭道(著)
LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

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