どこに住む? どう暮らす? 住宅の選択肢
クローバー通信 No.243
住みたい街ランキングの上位の常連は、横浜、吉祥寺、恵比寿ですが、5年程前から大宮が順位を上げ2位となり、つくばエクスプレスの開業により、流山おおたかの森が15位に入るなど、郊外のニュータウンが人気となっています。
今回は「住宅」について、現状や、選ぶ場合の選択肢について、取り上げていきます。
1 住宅価格の現状
国土交通省が発表した2023年不動産価格指数によると、住宅価格は2013年頃より上昇し始め、2010年と比較して、マンションでは約2倍、戸建てでも20%程度上昇しています。
この背景には、新築マンションの供給量が5割以下に減った事や、近年の建築資材の高騰などがあるとみられています。
都内では平均年収の18倍、神奈川県でも13倍の高値水準にあり、主な購入層は、地方や相続対策目的の高齢富裕層、パワーカップル、国内外の投資家となっています。
マイホーム需要では、中古マンションに流れているため、中古マンション価格も値上がりし、高止まりしています。
2 期間50年住宅ローンの衝撃
住宅価格の高騰を背景に、今まで最長35年が一般的だった住宅ローンにおいて、期間50年の取扱いをする金融機関が増加しています。当初は地方銀行が中心でしたが、最近ではネット銀行でも取扱いが始まり、20代、30代の若年層を中心に利用が広がっています。
裏を返せば、35年ローンでは希望の物件の審査基準を満たせないケースが増え、返済期間を延ばすことで月々の返済額を減らし、借入可能額を増やす必要に迫られているためと言えるでしょう。
50年ローンの場合を見ていきましょう。
特徴とメリット
❖ 毎月の返済額が抑えられる
❖ 借入可能額が増え、希望の物件に手が届きやすくなる
❖ 団体信用生命保険にも対応している
❖ 借り換えの選択肢が広がる
デメリットと注意点
❖ 金利が高めに設定される 35年返済の金利 + 0.15%程度
❖ 返済総額(利払い総額)が増える
❖ 完済時の年齢制限があり、借入対象者が限られる
❖ リタイヤ後にも返済が続く可能性がある
❖ 金利上昇や経済情勢の変化の影響を受けやすい
❖ 資産価値が残債を上回るリスクが高まる
◆ 「毎月返済額」や「金利」だけで判断しない
目先の「毎月返済額」や「金利」だけ見て判断すると、総返済額が増え、子どもが巣立っても、自分がリタイヤしても、返済し続けなければならない可能性があります。
◆ 将来、物件価格が上がったタイミングで売却できる?
地価が上昇すれば売却益でローンを完済し、次の住まいに充てることも可能です。
しかし都心の一等地などを除き、必ずしも上昇するとは限りません。
また、新築購入の場合は、広告宣伝費などが購入価格に含まれており、購入後すぐ売却すると購入価格では売れない場合が多くあります。
住宅ローンを組む場合のポイント
50年返済に限らず、住宅ローンを組む際には、目先の金額だけでなく、長期的に見たキャッシュフロー(お金の流れ)が重要です。
❖ 減収などでも生活に支障が出ないよう手元資金を確保
❖ 長期的なライフプランの見通し
❖ キャッシュフローに基づく無理のない返済計画
以上を踏まえて、総合的に判断しましょう。
3 空き家問題の現状と可能性
東京都の空き家戸数は約90万戸(空き家率10.9%)、神奈川県は約47万戸(空き家率9.8%)と、首都圏でも個人住宅空き家は急増しています。この空き家率には、戸建て住宅だけでなく、マンションや、賃貸物件の空室も含まれています。この背景には、高齢化の進展や、核家族化が進み相続しても住まないケースが増えていることなどが挙げられます。
相続の増加
首都圏(1都3県)の高齢者数は914万人、その中で後期高齢者は478万人(52%)を占めています。死亡者の数だけ相続が発生し、東京都の都区部では約20%、神奈川県でも約14%が課税対象になると見られているなか、相続財産の約4割を土地・家屋が占めているため、不動産マーケットに影響を及ぼしています。
中でも、ニュータウンの戸建て、地方の実家、リゾートマンション、老朽化したマンションなどは、【住まない・売れない・貸せない】場合が多く、早めの対策が必要です。
空き家の可能性
一方で、国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」事業、一部自治体の空き家政策、民間業者による空き家の買い取りなど、地域によるばらつきや課題は残るものの支援制度や取り組みも進んでいます。
リノベーションにより自分好みにカスタマイズするための家、店舗や民泊を行うための古民家など、空き家の中にお宝が埋まっているかもしれません。
4 どこに住むか?
街を選ぶ際には、医療介護・子育てなど行政サービスの充実や、周辺環境に加え、資産としての価値も重要なポイントです。
現在、東京都区部や川崎市、横浜市などの人気エリアは転入超過となっており、人の入れ替わりが活発なエリアほど、商業地の時価が上昇しています。
これは住宅の売買や賃貸取引が盛んに行なわれ、転入者が新たに買い物やサービスを利用することで、経済が活性化し、街の成長と共に不動産価格が上昇する傾向にあるためです。
反対に、下町や古くからの住宅街では新陳代謝が鈍化し、地価が上がりにくくなります。
ただし、現在の人気が将来にわたってずっと続くとは限らないことも頭に入れておきましょう。
5 どう暮らすか?
❖ 駅近で車を持たない生活
❖ 職場の近くに住む
❖ 郊外で広めの戸建てでノビノビ
❖ リモートワークで多拠点生活
❖ 実家に戻る
❖ 生活スタイルに合わせた賃貸生活
利便性をとるか、資産価値をとるか、自然など周辺環境を重視するか、建物自体にこだわるか、選択肢は様々です。あなたは何を優先したいですか?
まとめ
空き家問題、人口減少、3Dプリンタの家など新しい技術による低コスト住宅の出現、住宅をめぐる環境は今後大きく変化する可能性があります。すべての希望を満たすのは難しいため、優先順位をどうするのか、イメージしながらライフイベント・ライフプラン表を作成し、お金の流れ(キャッシュフロー表)を作成してみましょう。実現に向けて何をすべきかが見えてくるのではないでしょうか。
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