第85回 AIを味方につける魔法のスキル「プロンプトエンジニアリング」入門

情報セキュリティ連載
第85回 試される人工知能の実力
【生成AI時代の働き方②】AIを味方につける魔法のスキル「プロンプトエンジニアリング」入門

前回の記事では、職種を問わず全てのビジネスパーソンにとって、AI時代を生き抜くためには「人間力」が重要になることをお伝えしました。AIを単なるツールとしてではなく、自らの能力を拡張するパートナーとして捉えることの重要性をご理解いただけたかと思います。

さて、第2回となる今回は、そのAIという強力なパートナーの能力を最大限に引き出すための、極めて重要な実践的スキル「プロンプトエンジニアリング」について掘り下げていきます。このスキルは、もはや専門家だけのものではなく、これからの時代を生きるすべてのビジネスパーソンの新たな常識となりつつあります。

1 AIの能力を引き出す「プロンプト」とは?

プロンプトエンジニアリングと聞くと、何やら専門的な響きに聞こえるかもしれません。しかし、本質は非常にシンプルです。

プロンプトとは、生成AIに対する「指示」や「質問」のことです。そして、プロンプトエンジニアリングとは、AIから望ましいアウトプットを引き出すために、その指示を設計・最適化するスキルを指します。簡単に言えば、「AIへの上手なお願いの仕方」そのものです。

生成AIのアウトプットの質は、このプロンプトの質に完全に依存します。曖昧なお願いからは、曖昧で役に立たない答えしか返ってきません。逆に、具体的で質の高いお願いをすれば、AIは私たちの期待をはるかに超える成果を出してくれます。

2 良いプロンプト、悪いプロンプト

では、「質の高いプロンプト」とは具体的にどのようなものでしょうか。悪い例と良い例を比較してみましょう。

悪いプロンプトの例

「会議の議事録を要約して」

これでは、AIは何が重要で、どのような形式でまとめれば良いのか判断できません。

良いプロンプトの例

あなたは優秀なビジネスアシスタントです。以下の会議の書き起こしテキストを要約してください。
# 制約条件
• 目的:会議に参加できなかった関係者が、5分で内容を把握できるようにする
• 出力形式:
⒈会議の決定事項を3点、箇条書きでまとめる
⒉担当者別のToDoリストを作成する
⒊次回会議までの懸案事項をリストアップする
• トーン:簡潔かつ明確なビジネス文書のスタイルで
# 会議の書き起こしテキスト
(ここに、会議の文字起こしを貼り付ける)

このように、背景情報、文脈、制約条件、出力形式などを具体的に盛り込むことで、AIはその役割を正確に理解し、的確で価値のあるアウトプットを生成できるのです。

3 なぜプロンプトエンジニアリングが重要なのか?

このスキルは、一部のIT技術者のためだけのものではありません。むしろ、事務職、営業職、企画職など、すべての知識労働者にとって、ExcelやWordを使いこなすのと同レベルの基本的なデジタルリテラシーとなりつつあります。

AIと効果的に「対話」し、その能力を最大限に引き出す能力は、これからのオフィスにおける生産性を左右する決定的なスキルとなるでしょう。

4 AI活用は「小さな実験」から始めよう

プロンプトの重要性は理解できても、「いきなり仕事で実践するのはハードルが高い」と感じる方もいるでしょう。その感覚はごく自然なものです。先進企業のAI導入も、実は小さなステップから始まっています。

そこで推奨されるのが、準備段階として「実験とリテラシー向上」です。まずは、全社的なルール作りや高価なツールの導入を考える前に、リスクが低く、効果を実感しやすい個人的なタスクから始めてみましょう。幸い、現在は無料または低コストで利用できる生成AIツールが数多く存在します。

• メールのドラフト作成:

「取引先へのお礼メールの下書きを、丁寧な言葉遣いで作って」

• アイデア出しの壁打ち:

「社内イベントの斬新なアイデアを10個出して」

• 情報収集:

「〇〇業界の最新動向について、重要なポイントを3つにまとめて」

このように、AIを「優秀な相談相手」として、まずは気軽に試してみることが重要です。様々な聞き方を試す中で、「こう聞けば、こう返ってくるのか」というAIとの対話のコツを掴むこと。それが、AIリテラシー向上のための、最も確実で楽しい第一歩となります。

まとめ

今回は、AIを使いこなすための実践的なスキルとして、以下の点をご紹介しました。

❖ AIへの指示である「プロンプト」の質が、アウトプットの質を決定する

❖ 良いプロンプトには、背景、目的、形式などの具体的な指示が含まれる

❖ プロンプトエンジニアリングは、これからの全ビジネスパーソン必須の基本スキルとなる

❖ AI活用は、まず個人的なタスクで気軽に「実験」することから始めるのが成功の秘訣である

次回は、個人で身につけたAIスキルを、どのようにチームや組織全体の力へと昇華させていくか、その具体的なステップである「業務プロセス改革(BPR)」について、先進企業の事例を交えながら解説していきます。

 

 

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