国債格下げ
米国債格下げ
格付け会社ムーディーズは5月、米国債の格付けを下げた。他の格付け会社2社は既に格下げを行っており、米国債は主要格付け会社すべてで格下げになった。
アメリカの格下げを受けて、G7の中で国の債務のGDPに対する比率が高い日本の国債の格下げに注目が集まりつつある。(図参照)
日本経済新聞では6月10日から3回「きしむ日本国債」と題して、この問題を取り上げた。
国債格下げは日本を壊滅させる
企業の格付けはその国の格付けを基準に考えられており、仮に日本国債がトリプルBになれば、日本の優良企業の格付けも同様の扱いを受ける恐れがある。
欧米の投資家は投資対象をシングルA以上と区切ることも多い。トリプルB扱いになれば、日本の銀行が海外市場で外貨を調達することが難しくなるといわれている。
あるメガバンクの中枢幹部は「格下げされたら海外ではビジネスが成り立たなくなる」と警戒する。
財務省の諮問機関である財政制度等審議会は、5月にまとめた意見書に「国債の格下げは決して非現実的な話ではない」と記した。(※)
日本では今、何が
日本では国家財政・国債がらみで今年に入って様々な現象が起きている。
⒜ 日銀国債買い入れ縮小
⒝ 長期金利上がる
⒞ 都議選、参院選での自民党大敗
⒟ インフレと令和の米騒動
⒠ トランプ関税・防衛費5%
⒡ 中東情勢:イラン空爆・原油途絶懸念
⒜ 日銀は昨年4月から、月間国債買入額を四半期ごとに減額幅を4千億円としていたが、6月の会合で来年4月から2千億円に圧縮することを決めた。
⒝ 長期金利が上昇している。長期金利が上昇したため、長期国債の発行額を減らし、短期国債の増額にシフトした。
⒞ 自由民主党が東京都議会議員選挙、参議院議員選挙で大敗し、消費税減税論が台頭し財政規律への懸念が増大した。
⒟ 昨年来コメの値段が高騰し「令和の米騒動」と言われる現象が出現した。
⒜⒝は国債に直接関係する事柄であり、⒞⒟は日本の経済に直接影響を及ぼす事項である。⒠⒡は日本を取り巻く国際情勢の変化である。
始まったインフレ
昨年、今年とアメリカ、イギリス、フランス、インド、タイなどへビジネスツアーに参加した当社社長の報告によると、ラーメン一杯が7000円、ビジネスランチが5000円するなど、日本以外の海外諸国の物価の高さに驚かされる内容であった。
欧米のインフレと日本のインフレの違いはどこにあるか。
欧米のインフレはコロナで物流が停滞したことによる供給制約によるインフレと、コロナ対策費の膨大な支出先行(アメリカではGDP比10%に及ぶ)によるバラマキ先行のデマンドプル型の相乗効果による急激なインフレである。
日本ではコロナ禍においてはインフレの兆しは少なく、収束し始めた令和5年春ごろから一部食品などの円安を主因とするコストプッシュ型の値上げが始まったばかりである。
防衛費5%に耐えられるか
トランプアメリカ大統領は、防衛費・関連予算を含めてGDP比5%をEC諸国・日本など同盟諸国に要求してきた。
欧州はロシア・ウクライナ戦争で現実的な問題の真っ只中であり、既に防衛予算を増額する方向に踏み切った。ドイツは憲法を改正し、EU諸国は各国の財政規律の許容枠の計算から、防衛予算枠を除外して計算する仕組みに決めた。
ウクライナ戦争の継続、イスラエル・イラン戦争の中東への戦線拡大、中国の急速な軍事力の拡大、北朝鮮の核保有など、日本を取り巻く国際環境は急速に悪化してきている。
台湾有事や南海トラフ地震等の自然災害にも警報が出ている折、日本はこれらの要求に応じられるか。
参議院も過半数割れし、政党の多党化が進み政局が流動化する中で、自公政権、いや、政治はどのような対応をするのであろうか。
(※)『激動の世界を見据えたあるべき財政運営』令和7年5月27日 p.11
LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

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