PFワーカー

PFワーカーとは

会長「PFワーカー」という新しい言葉に遭遇した。5月3日掲載 朝日新聞、タイトルは「PFワーカー、どう守る」である。

「PF」はプラットフォームということである。新聞によると、

『PFワーカーとは、飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」やアマゾンの配達員といった、PF企業などを通じて仕事を請け負う働き手。個人事業主なので「労働者」に保証されている最低賃金や残業代といった仕組みは原則、対象外だ。

だが、実際には、アプリなどで使用者側から配達ルートなどの指示を受けつつ、GPSで働く状況を逐次把握されながら指示を受けるなど、使用者側に「指揮監督」されている実態があり、「労働者」として労災が認められるケースも出てきた。』

労働基準法上の「労働者」とは

労働基準法上の労働者に当たるかどうかの判断は1985年の報告書が基になってきた。当時は、個人ドライバーや一人親方、ワープロを使って自宅で入力作業をする人などをどう扱うかが問題だった。その後インターネットの普及で働き方が変化し、ギグワーカーのように人工知能(AI)やアルゴリズムにより働き方を指示されるケースが出てきた。

労働者は労働法制で手厚い保護が定められているため、厚生労働省の別の研究会で「使用者が労働法上の責任や社会保障負担を免れる目的から、労働者として雇用すべき者を請負事業者として扱うなどの事案が生じている」との報告書を出し、ギグワーカーが労働者に当たるかどうかが争われるケースが増えている。

「ウーバーイーツ」では宅配員が労働組合を作って団体交渉を行っており、東京都労働委員会は配達員を労働組合法上の労働者として認めており、アマゾンジャパンの荷物配送を請け負うドライバーらも労働組合法上の労働者として扱うように申し入れしているとのことである。

働き方改革

働き方改革と言われて久しいが、時間・場所に捉われずに働く環境はリモートワークとしてコロナで実現し、定着したように見える。しかし、コロナが落ち着いた現在ではやや「FACE TO FACE」の良さも再確認されてきて、徐々に対面・集合の場面に戻りつつある。

インターネットの普及により多様な働き方・仕事の仕方が出てきた。収入を得る手段として「インフルエンサー」「アフィリエイター」「ユーチューバー」「eコマース」など、時間・場所に捕らわれない、また、労働契約に縛られない働き方ができるようになって久しい。

「夢見るフリーター」※

フリーター・ギグワーカーの収入構造を見ると1%が月100万円以上、95%以上が月10万円未満という調査結果の報告がある。

「インフルエンサー」「アフィリエイター」「ユーチューバー」などは限られた時間制限、文字制限の中での「見せ方」「話し方」「書き方」「つかみ方」でこのような差が生じていると思われる。

フリーターの95%が月収10万円未満とはいえ1%が月収100万円を超える現実がある。実社会では様々な格差や差別、息苦しさがあっても、かりに月額10万円未満であっても副収入であれば結構なお小遣いにもなるであろう。

自分の情報に対して「いいね」と肯定的な反応・意思表示に対して手ごたえを感じ、承認欲求を満たしてくれるデジタル空間は、それなりに居心地がいいものらしい。

デジタル空間で承認欲求が満たされる「夢見るフリーター」が平成30年間の失われた30年、格差が拡大してきた30年という空間を目に見えない「ガス」のごとく充満させて、心地よさを演出してきた。

「PFワーカー」は操り人形?

しかし、「PFワーカー」はこのような個性を発揮するチャンスや承認欲求を満たす仕組みがない。詳細なマニュアルに従って労働時間を切り売りするもので、指示された通りサービスを提供しなければならない。クレーム責任はサービス提供会社(PF)の方に向けられ、管理監督が厳しくなり、ギグワーカーとのギャップが生じてくるのであろう。

産業革命が始まったころチャーリー・チャップリンが機械に支配され、機械に振り回されるワーカーを描いたように、「PFワーカー」は機械に代わってシステムに振り回され、人としての能力のうち「必要な時間」「必要な場所」に適合した「労働力」のみを抽出し支配されるワーカーを象徴しているように見える。

※山田昌弘氏(著)『希望格差社会、それから』p.156~

 

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 代表 小川 湧三

 

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