税の国際協調②

本格的なネット社会により、収益を獲得できる消費国(市場国)に物理的拠点(PE)を置かずにビジネスを行う企業が増加したにもかかわらず、市場国で課税が行えないことに異議を主張する国が増えました。

欧州を中心にネットビジネスの市場国でも課税できる「デジタルサービス税」の制定が検討されましたが、一方的な措置で二重課税に対する救済策もないことから、国際協調が必要でした。

そこで、OECD(経済協力開発機構)でBEPSプロジェクトが組まれ(「BEPS」とは「Base Erosion and Profit Shifting」の略で、日本語では「税源侵食と利益移転」と訳されています)、長年にわたり新しい国際課税のルール作りが行われました。

2021年10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において、「PE」がなくても市場国でも課税できる「デジタル課税」や、大企業の課税逃れを防止するため「グローバルミニマム課税」が国際的に合意されました。日本をはじめ欧州、東南アジアの各国で国内法の整備が進められています。

国際課税に関する大改革の合意ができたのは、各国の専門家たちがそれぞれの国を代表しつつも、共通の問題意識と熱意があったからだと思います。

しかし、大改革の実現が危ぶまれています。国際合意は地球規模の観点から達成できましたが、いざ法制化となると各国の事情や思惑が優先され、一筋縄ではいきません。

アメリカは「米国の所得に対する域外管轄権を認めるもので、米国税制の制定能力を制限するものだ」として、今年の1月20日にOECDの国際課税ルールから離脱を指示する大統領覚書を発表し、中国も「参考とするが準拠しない」という態度です。

今後の議論を見守る必要がありますが、国際協調によるルール作りが頓挫し、国際合意もなく各国がデジタルサービス税を導入すると、多額の二重課税が発生することとなり、グローバル経済に大きな障害となります。

国際課税問題は、国の主権を尊重しながら、税の中立性を確保する必要があることから、自国第一主義では解決できません。世界的かつ長期的な観点から国際協調を推進し、公平で中立的な国際課税ルールが必要です。

 

税理士法人LRパートナーズ
川崎事務所 所長 山下 功起

 

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