トランプ・リスク
世界が変わった
「アメリカでドナルド・トランプ氏が大統領に就いてから一カ月あまりが過ぎ、世界が変わった。日本やカナダ、ヨーロッパといった同盟国をないがしろにし、強権国家に近づく。トランプ氏、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、そして中国の習近平国家主席という「力の信奉者」の三人が新しい世界秩序を決めてしまうかもしれない。独裁者たちが群雄割拠した第二次世界大戦前のような薄気味悪さが漂う。」
これは雑誌「選択」2025年3月号『米中露で国際秩序を決める時代へ「1939年」に逆戻りする世界』と題した記事の冒頭の書き出しである。
続いて「独ソは当時、公開しない秘密議定書を取り交わし、東ヨーロッパを分割した。ドイツがポーランド、ソ連がバルト三国を自らの勢力圏に組み込んだ。もちろん独ソは分割対象となった東ヨーロッパ諸国の意見など聞いてはいない。」
「アメリカがロシアと結託し、ウクライナをロシア属領にすることを認める。一方、なにかと目障りな欧州連合(EU)は親トランプの極右勢力に蹂躙させ、自らに都合のいい世界地図を描こうとしているように見える。」
「極東にとって対岸の火事ではない。(略)最悪のシナリオでは、トランプ氏が北朝鮮を「核保有国」と認める一方、アメリカ本土に届く長距離ミサイルの開発・保有を断念させるというディール(取引)が成立するかもしれない。」「そうなると北朝鮮のミサイルの対象は日韓となるが、トランプ氏にとっては知ったことではない。」
「アメリカは利さえあれば独裁国家ロシアとですら手を組む傍若無人の政治・経済集団に乗っ取られてしまったようだ。」「法の支配や他国間主義など戦後の西側諸国が誇りにしてきた枠組みは無視され、怪しげなナラティブが氾濫する。『民主主義国が少数派になった世界』が目に見える形になり、暗い影が世界を覆う。」
このような要旨の記事である。
新たな権威主義国の誕生?
トランプ氏はアメリカの大統領として正当な大統領選挙によって選ばれた。しかし、大統領に就任した途端、オールマイティの特権を与えられたように、あたかも魔法の杖を持ったかのように、杖を振り回している感がある。
トランプ氏の行動はグリーンランド、パナマ、カナダ等に対して領土的野心をむき出しにし、あたかも、プーチン氏や中国の習近平氏と同質の強権政治のように映る。
また、第一次世界大戦後に誕生した民主主義的な平和を目標としたワイマール憲法下でドイツのヒトラー政権が誕生したことを想起するのは思い過ごしであろうか。
予見不可能:トランプ・リスク
大統領就任当初から大統領令の大量発布、関税問題、移民問題、内政における行政改革など予見できなかったことが大胆に行われている。結果が顕われる数カ月後の反応も予見できない。どんなリアクションが顕われてくるのであろうか。
就任とともに始まったウクライナ・ロシア調停の結果も、一筋縄ではいかないプーチン氏に翻弄され、結果次第で台湾有事に及びかねない。
台湾に関してもトランプ政権の発言が微妙に変化しており、中国政府に誤ったメッセージを与えかねないと危惧している。
日本はどうなる
私はリーマン・ショック以来、日本の財政破綻懸念が報じられてからライフワークとして「日本の財政悪化」の状況や影響を及ぼすであろう事象をウオッチしてきた。
毎年大波に追われるような感じで日本の財政が悪化してきている状況、特に中国がWTOに加入し、自由民主資本主義市場へ国家資本主義の鎧を被って参入してグローバル・エコノミーを破壊してしまい、ブロック経済体制に変質させてしまったことの影響の大きさを感じている。
これに対抗するトランプ大統領の関税政策は一理あるとは思うが、中国に対してカナダ、メキシコ、欧州、日本を含むすべての国に対して対中関税包囲網を求めるのであれば理解できるが、すべての国へ無差別に実施しているところに問題がある。
同盟国に対する防衛費についてもウクライナ戦争の戦費負担や、日米同盟の片務性に絡んだ負担増を求めている。
これらは日本の経済・財政に多大な影響を及ぼす。
トランプ・ショックは日本の背に乗りかかる最後の「1本のワラ」になるのであろうか。
LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

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