第80回 ドルとビットコイン、その交差する未来

情報セキュリティ連載
〈デジタル経済考コラム〉

金融で大きな動きがありましたので、今回は生成AIの記事を休載させていただきます。

2025年3月7日、金融史に新たな一章が刻まれました。ドル発行国である米国がビットコイン(BTC)を政府の準備金に組み込む大統領令がトランプ大統領により署名されたのです。

この組み込みの動きは、世界的な債務危機、米ドルの地位低下、共産圏の暗号資産利用拡大、そして地政学的な緊張の高まりを背景に、複雑に絡み合った要因が作用して生まれたものです。以下米国が準備金にビットコインを組み込んだ意味合いについてお話しさせていただきます。

1 レイ・ダリオの警告と膨張する債務、そしてドルの弱体化

著名投資家レイ・ダリオ氏は、長年にわたり世界的な債務水準の増加に警鐘を鳴らしてきました。特に、米国の財政状況を「危険」と表現し、巨額の債務と低金利が同時に存在する状況を、過去1世紀で最大級の経済的・政治的格差と捉えています。ダリオ氏は、国債などの債務資産から距離を置き、金やビットコインのような代替資産への投資を推奨しており、彼の警告は、基軸通貨である米ドルへの信頼が揺らぎ始めていることを示唆しています。

国際通貨基金(IMF)のデータによれば、世界の総債務は2022年末時点で303兆ドルに達し、世界GDPの349%に相当します。

特に、世界最大の経済大国であるアメリカの債務残高は、2023年1月には31兆ドルを超え、GDP比で128%に達しています。この巨額な債務は、金利上昇や景気後退などのリスクに対して、アメリカ経済を脆弱にしています。

上記のような国際通貨基金(IMF)の報告書は、ダリオ氏の懸念を裏付けるように、各国の債務残高が異常な水準に達していることを示しています。世界経済は、過去に例を見ないほどの債務の山に直面しており、この状況が続けば、世界的な金融危機を引き起こす可能性も否定できません。米国の債務増加は、ドルの価値を低下させ、その基軸通貨としての地位を脅かす要因となっています。

2 共産圏の暗号資産利用拡大と米国の危機感

もう一つ米国の動きを理解する上で重要なのは、共産圏における暗号資産の利用拡大です。

ロシアは、経済制裁を回避するために、貿易決済において暗号資産の利用を模索しています。これは、米ドル中心の国際決済システムからの脱却を意味し、米国の金融覇権に対する挑戦とも言えます。北朝鮮のハッカー集団「ラザルスグループ」は、サイバー攻撃によって盗んだ暗号資産を資金源として活用しています。北朝鮮のビットコインの保有量は世界第三位の保有量にまでふくらんでいます。これらの動きは、暗号資産がテロ資金や不正資金の移動手段として利用されるリスクを示すものであり、米国にとって安全保障上の脅威となっています。

これらの動きは、米国政府に危機感を与え、暗号資産に対する戦略の見直しを迫る要因となっています。米国がビットコインを準備金に組み込む可能性は、これらの動きに対抗し、暗号資産分野における主導権を維持するための戦略の一環と捉えることができます。

3 地政学的な緊張と暗号資産

地政学的な緊張の高まりは、暗号資産の普及を加速させる要因となっています。ロシアによるウクライナ侵攻以降、欧米諸国はロシアに対して厳しい経済制裁を発動しました。これにより、ロシアは従来のドル建て取引が困難になり、新たな決済手段を模索する必要に迫られています。

報道によると、ロシアとインドは石油取引において、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、USDTなどのステーブルコインを使用しているとされています。暗号資産は、国境を越えて迅速に送金できるため、制裁回避の手段として利用されている可能性があります。

4 ゴールドマン・サックスの見解の変化

金融界の巨人、ゴールドマン・サックスの仮想通貨に対する見解も、時代の流れとともに変化してきました。かつては仮想通貨の価値や実用性に対して懐疑的な見方を示していましたが、近年では、ブロックチェーン技術の可能性や、仮想通貨市場の成長を認識し、関連サービスを提供するようになりました。

機関投資家からの需要の高まりを受け、仮想通貨取引やカストディサービスなどの提供を開始し、仮想通貨関連企業への投資や、デジタル資産分野での事業展開も積極的に進めています。ゴールドマン・サックスの態度の変化は、仮想通貨が金融市場において無視できない存在になったことを象徴しています。

5 ドル発行国米国の決断と暗号資産の未来

こうした状況下で、ドル発行国である米国政府がビットコインを準備金に組み込む可能性が浮上したことは、世界経済にとって計り知れない意味を持ちます。米国政府は既に、民事・刑事没収を通じて相当量のビットコインを保有しており、政府がさらにビットコインを取得する可能性は、暗号資産市場に大きな影響を与えるでしょう。

しかし、ビットコインは価格変動が激しく、法定通貨としての地位も確立されていないため、準備資産としての安定性には疑問符が付きます。また、ビットコインの利用は、マネーロンダリングやテロ資金供与などのリスクも潜んでいます。

米国政府の動きは、世界の金融システムにおけるパワーバランスの変化を加速させる可能性があります。今後、他の国々が米国の動きに追随するのか、そしてビットコインが国際的な準備資産としての地位を確立するのか、注目が集まります。

※ 暗号資産の状況は、市場の動向、規制の変更、技術の進歩など、様々な要因によって刻々と変化します。本記事の内容は執筆時点での情報に基づいており、将来の動向を保証するものではありません。暗号資産に関する投資や取引を行う際は、ご自身の判断と責任において、最新の情報をご確認ください。

《参考文献》

•『「ビットコイン準備金」構想の危うさ岩田一政氏』 2025年1月23日付日本経済新聞Web版
•『ロシアは原油取引に暗号通貨を頼っていると情報筋が語る』ロイター
(https://www.reuters.com/business/energy/russia-leans-cryptocurrencies-oil-trade-sources-say-2025-03-14/)

 

 

お問い合わせ

神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートいたします

お問い合わせ