日本売り?
日本銀行の決定
日本銀行が国債の保有残高を減額することを決め、買い入れ額6兆円を3兆円に減額することを決めた。
これに関し、週刊現代 9月14日・21日号「ニッポン円魔帳」で、「『日本売り』がついに始まる?日銀『国債爆買い』手じまいの衝撃」というコラムが掲載されていた。
内容は、「日本銀行が国債の買い手から手を引くが国内での買い手が見つからないので、海外の投資家に国債投資を呼びかけている。日銀も民間金融機関も国債の引き受けを拒めば、需給バランスが一気に崩れ、長期金利が急騰するリスクがある。最悪の場合「国債だけでなく円や株式からもマネーが逃避する『日本売り』に発展しかねない」との指摘も出始めた。日本の財政の手綱さばきは、険しさを増している。」という趣旨である。
新聞の記事から
私も国債の動向に関しては気にしているが、7月31日の日本銀行の政策決定会合に関して、特に海外へ国債への買い手探しに関するいくつかの記事が目に留まった。
● 7月14日号 日経ヴェリタス
「日銀流の量的引き締め」
● 7月31日掲載 日本経済新聞
「国債安定消化へ海外詣で「ポスト日銀」を開拓
● 8月4日掲載 日本経済新聞
「金利が動く世界へ『巨鯨・日銀』の空白埋まるか国債村、消えたプレーヤー」
● 8月11日号 日経ヴェリタス
「日銀が買い入れ半減、月3兆円へ令和の利上げ、国債の買い手は財務省、利払い増に身構え 海外に活路開く?」
● 8月14日掲載 日本経済新聞
「国債、脱・日銀に波乱の芽買い手不在回避へ海外開拓」
など、財務省が国債の買い手を海外に求めている記事がたくさん掲載されていて、気になっていた。
先月号で取り上げた、伊藤通宏著『日本消滅』に書かれている7つのリスクのうち「③国債のデフォルト」では、
「国の借金である国債を含む政府の債務残高は、年を追うごとに増え、二〇二二年には、およそ一四五五兆円となっている。これに対して日本の名目GDPはおよそ五五七兆円だったので、その二倍以上の借金があるということになる。
(中略)
その一方で、「貸し主」である日本国民が保有している「家計の金融資産」は、(略)二〇二一年末に二〇〇〇兆円を超えたとのことだ。(略)国民が持っているお金が、国民が国に貸しているお金(国債)の倍近くあるということになる。
(中略)
私が懸念しているのは、歴代の首相が、膨らみ続ける国債の償還を真面目に考えているのかどうか、ということである。これまでの経緯を見ていると、票稼ぎのバラマキ政策の財源として、国債などいくらでも発行できると思っているのではないかと感じることがある。
特に危険を感じるのは、償還財源を新規の国債発行でまかなっていることだ。要するに「借金を返すために新たに借金を繰り返している」ようなものである。これではいっこうに借金は減っていかない。膨らみ続ける借金は、いずれ必ず返済しなければならず、結局は将来世代の負担となってしまう。」
と書いている。
石破新首相の発言
総裁選挙中と総裁就任後の発言のトーンダウンや高市氏有利と市場が先買いした予想の狂いから、円高予想から円安に振れたり、経済政策についての予想から円安に振れている。
また、石破首相の日本銀行の利上げに消極的な発言もあって為替相場は大きく円安に振れた。
日本のもう一つの懸念は海外の投資家が国債を保有すると、国債の海外比率が高まる危険性である。
日本の限界・一本のワラ
5月に日銀の政策発表に対して海外の投機筋が大規模な円売りを仕掛け大幅な円安に振れ、財務省が10兆円近い為替介入を行ったことが明らかになっている。まだ為替介入余力があるとはいえ外国人の保有比率を高めることは、かつてイギリスで起きたジョージ・ソロスのポンド売り崩しのように日本の為替が売り崩される危険性が増すであろう。
日本は新政権になる。海外の緊張に伴う防衛費の増加は焦眉の急の政策であり、さらに能登地震、今回の激甚災害に指定された台風による災害など災害関連の支出予算が予定されている。衆議院解散選挙による党首討論などを聞いていると与野党ともお金が降って湧いてくるような政策を主張している。何が「一本のワラ」になるかわからない混沌の世界が始まったのではないだろうか。
LR小川会計グループ
代表 小川 湧三
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