第74回 生成AIと実務の現状②
情報セキュリティ連載
試される人工知能「チャットGPT」の実力
前回は、大和総研が出したレポート「生成AIが日本の労働市場に与える影響」について取り上げさせていただきました。
今回は、そのレポートにある生成AIが労働補完技術、労働置換技術どちらの立ち位置にあるかについて考察させていただきます。
1 労働置換技術としての生成AIの可能性
結論から申し上げますと、現時点での生成AI技術は労働補完技術である要素が強いように思います。
近年の生成AI技術の進歩は目覚ましく、特にChatGPTの登場は社会に大きなインパクトを与えました。この流れは法人向けサービスにも波及し、様々な業務効率化ツールが登場しています。
生成AIの技術はよくわからない部分も多く、一部では雇用を奪ってしまうかのような報道もあり、不安になる方も多いでしょう。ただ、生成AIが雇用を奪う労働置換技術に到達するには、まず生成AIが倫理観や安全性の懸念が払拭されコスト面で人件費より割安にならなければ、労働置換技術になるような開発が受け入れられる論調にはなりえません。
2 労働補完技術としての生成AIの可能性
では労働補完技術としての生成AIの可能性はどうでしょうか。新しい技術が雇用に与える影響は、それが「労働補完技術」と「労働置換技術」のどちらの側面が強いかによって決まります。労働置換技術は、従来人間が行っていた作業を自動化し、機械に代替させるものですが、労働補完技術は人間の能力を補完し、生産性向上を支援するものです。生成AIは後者の側面、つまり労働補完技術としての可能性を秘めており、以下のような点で期待されています。
業務効率化
生成AIは、議事録作成、メール作成、報告書作成、翻訳、プログラムコード生成など、これまで人間が時間をかけていた業務を自動化または効率化することができます。例えば、専門学校教員の業務では、教育プログラムや研修スケジュールの作成、講義用資料の準備、学生の学習内容の評価といったタスクが生成AIによって効率化される可能性があります。
創造性向上
生成AIは、アイデア出しやデザインの初期段階など、人間の創造性を刺激するツールとしても活用できます。例えば、新規事業のテーマに関する情報収集や、斬新な広告コピーの考案などに役立てることができます。
人材不足の解消
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、生成AIは不足する労働力を補完する手段としても期待されています。ルーティンワークを生成AIに任せることで、人間はより創造的で付加価値の高い業務に集中することが可能となります。
3 生成AIサービス増加の背景と事例
上記のような利点から、生成AIを活用した法人向けサービスは増加傾向にあります。特に、ホワイトカラーの業務効率化を目的としたサービスが多く、以下のような事例が挙げられます。
業務自動化ツール
RPA(Robotic Process Automation)と連携し、より複雑な業務プロセスを自動化するソリューションが登場しています。例えば、請求書処理、データ入力、顧客対応など、これまで人間が手作業で行っていた業務を自動化することができます。
顧客対応サービス
チャットボットや音声アシスタントに生成AIを搭載することで、より自然で人間らしい対話が可能になるだけでなく、顧客一人ひとりに最適化された情報提供や提案を行うことも可能になります。
マーケティング支援ツール
顧客データ分析やターゲットに合わせた広告文の作成、ウェブサイトコンテンツの自動生成など、マーケティング業務を効率化するサービスも登場しています。
4 生成AIサービス導入の課題と展望
生成AIサービスの導入には、情報漏洩リスクや倫理的な問題など、解決すべき課題も存在します。これらの課題を克服し、生成AIの持つ可能性を最大限に引き出すためには、セキュリティ対策の強化、倫理ガイドラインの策定、そして生成AIを使いこなせる人材の育成などが重要となります。
生成AIは、まだ発展途上の技術ではありますが、数年先には労働力不足の問題が表面化し、生産性の向上といった社会的な課題を解決することが求められます。
それを見据えてか、1つのサービス内にChatGPTや最近注目の生成AIであるClaude3など複数の生成AIを利用できるサービスが増えています。
1つの生成AIサービス内に複数の生成AIモデルが組み込まれたサービスが出ている状況を考えますと、生成AIを利用している企業が業務によって使用する生成AIを変えるような局面を迎えているのかもしれません。
今後、さらに生成AIの技術革新が進み、より高度なサービスが登場することで、生成AIは企業活動にとって不可欠なツールとなる可能性があります。
《参考文献》
大和総研2023年12月8日「生成AIが日本の労働市場に与える影響①」
大和総研2023年12月11日「生成AIが日本の労働市場に与える影響②」

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