ラストベルト

副大統領候補

会長アメリカの長丁場の大統領選挙が始まったが、決まって選挙戦を左右するいくつかの地域に注目が集まる。
その一つにラストベルト地帯がある。

そのラストベルトで生まれ育ったJ・D・バンス上院議員がトランプ氏の副大統領に指名された。同氏は中西部出身で白人貧困層を描いた「ヒルビリー・エレジー」の作者として知られる。バンス氏は地元オハイオ州について「かつて製造業が栄えたこの町で中流階級の生活を送ることができた。しかし、時がたつにつれて着実に衰退していくのを目の当たりにした」と振り返る(7月17日付 日本経済新聞より一部引用)。

ラストベルト

ラストベルト(Rust Belt)とはアメリカ合衆国の中西部と大西洋岸中部の一部に渡る脱工業化が進んでいる地帯を表現する呼称で、ラスト(rust)は錆という意味で、使われなくなった工場や機械を表現している。

1960年代以降、グローバリゼーションと世界的自由貿易合意の拡大は、アメリカ合衆国の労働者には悪条件であった。低賃金で生産できる国との厳しい競争で、開発途上国との貿易が拡大した。

1970~1971年の不況に始まって、生産が海外に移転され、アメリカの製造業の数が減り始めた。

アメリカの製造業の雇用数減少は北西部や中西部での工場の減少・廃棄につながり、これを強調する「ラストベルト(錆ついた地帯)」という別名が付いた。しかし、ラストベルトは現在でもアメリカ経済の重工業と製造業の重要な部分を形成している。
以上がウィキペディアの「ラストベルト」の要約である。

第二次世界大戦前後にアメリカ産業を支えた労働者を吸収しきれず、白人労働者だった人たちが下層階級に沈んでしまった地帯でもある。大統領選挙はこの地帯の人たちにどのような光を当てるのか、その施策提言が選挙を左右しているのである。
ここでいう「低賃金で生産できる国」とは、第二次世界大戦で敗れたドイツ・日本を指している。

アメリカの大統領選挙のたびに話題となるラストベルト地帯は、かつてはアメリカ製造業の中心地と言われ、製造業が衰退した現在では、中流から下流に転落した白人の多い地帯である。

日本はアメリカの歴史をなぞる

日本は昔から資源のない国だから加工貿易を通じて輸出立国を目指すべきだといわれてきた。それが第二次世界大戦で壊滅した産業・経済が朝鮮動乱を機に工業化が一気に進み、経済復興につながり、やがては「JAPAN as No.1」と言われるまでになった。

しかし、歴史は所を変えてなぞる。日本はアメリカのラストベルトの歴史をなぞっているのである。
なぜ、ラストベルトを取り上げたのか。

ラストベルトがグローバリゼーションの波によって、アメリカの製造業に低賃金国への産業流出が起こった。その結果、アメリカの白人労働者、賃金労働者の失業と中間層の没落によってラストベルトが生まれたように、日本もソ連崩壊によるグローバリゼーションの始まりと、バブル崩壊が重なり製造業の海外流出が始まった。

極め付けが中国のWTO(世界貿易機関)加入によってグローバル化が一挙に進み、日本の製造業が中国の低賃金の波に飲み込まれてしまった。国内的にはそれに追い打ちを掛けるように、労働者派遣法の改正等により、いわゆる「派遣切り」と言われる中間労働層の崩壊が生じ、日本全体がアメリカのラストベルト状態に陥ってしまった、といっても過言ではない。

「RUST JAPAN」

今になって「賃上げ」官製運動が始まっているが、30年にわたって産業構造を崩壊させ「失なわれた30年」と揶揄される状態に陥ってしまったいま、中国・東南アジアの賃金水準と[=:イコール]になるまで実質的には下がってしまうことを覚悟しなければならない。名目賃金は上がっても、円安が進み実質賃金は下がることを覚悟しなければならないと思う。

GDPは今年はインドに抜かれ5位に下がる。あらゆるグローバル指標は日本が既にG7から脱落したことを示している。
出生率の加速度的な減少や、地方の過疎化・消滅自治体の増加が進んでいることなど、ラストベルト(Rust Belt)ならぬラストジャパン(Rust Japan:錆ついた日本)にならないように切に望むものである。

 

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 代表 小川 湧三

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