第71回 業務に生成AIを活用する方法③

情報セキュリティ連載
試される人工知能「チャットGPT」の実力

今回は、日経新聞で組まれた教育進化論という連載記事から生成AIとの向き合い方について書かせていただきます。記事は全5回、内容はAI関連のテクノロジーが学校教育にどう影響を与えるかについてです。この内容は教育と生成AIについて書かれていますが、教育の部分はそのまま労働環境に置き換えられる内容です。この記事には、今の日本の労働状況と、今後どう生成AIを関係させていくかのヒントが提示されています。

生成AIを使う現場での状況をお伝えしたいと思います。

1 生成AIが拓く、創造性溢れる未来の労働環境

日本社会は、古くから規律性と画一性を重視する傾向が強く、教育制度もそれに沿った形で構築されてきました。これは、かつては大量生産・大量消費の社会モデルに適した考え方でしたが、現代社会においては変化の激しい状況に対応しきれず、新たな課題を生み出しています。特に、人口減少やAI技術の進歩は、従来型の社会構造や労働環境に大きな変化をもたらしています。

2 変化への対応力が創造性を育む

日本の教育は、画一的で規律重視の傾向が強いため、変化への対応力や創造性を育むことに課題を抱えています。教科書検定の仕組みも、内容の更新が遅く、デジタル教科書に対する規制が厳しいため、生成AIに関する記述が教科書に掲載されるのは早くても28年度に採用される教科書とのことですが、このスピード感では、子供たちが変化の激しい社会で必要なスキルを身につけることが困難と言わざるを得ません。

一方、米国サンディエゴの公立校で行われているプロジェクト型学習は、創造力と知識の応用力を重視した教育方法です。生徒は、ミニゴルフのコース作りを通じて物理法則を学ぶなど、実体験を通して学びを深めます。このタイプの教育は、変化への適応力と問題解決能力、そして創造性を育むのに有効である実例を記載しています。

3 創造性を開花させる新たなツールとしての生成AI

上記の記事では教育と生成AIの関係性まで記載していませんが、生成AIは、人間の創造性を飛躍的に高める状況を示唆しています。

サンディエゴの例が示すように、実体験には教科書に記載されていない状況が突如として起こります。このとき従来の教科書の範囲では答えにつながる記載がない場合でも生成AIはその状況、状況において生徒へ適したヒントを、その場の状況を踏まえての教科書に即した答えを提示します。

このように生成AIは大規模言語モデル(LLM)という膨大な知識を基に、複雑な問題を解決したり、新たなアイデアを生み出したり、人間が行う作業の効率化に貢献します。生成AIの活用次第で、従来の仕事の枠にとらわれず、創造性を駆使した新たな仕事を生み出し、より自由な労働環境を実現できる可能性があります。

上記でも触れましたが、教育現場において生成AIは、生徒の学習を支援する強力なツールとして活用できます。生徒がプロジェクト型学習などで抱く疑問に対し、生成AIは豊富な知識と情報提供により、理解を深めるサポートができますし、生徒がオリジナル作品やアイデアを創造する際にも、生成AIは貴重なアイデアや資料を提供することで、創造力を開花させる役割を果たします。

4 生成AIが実現する新たな労働環境

生成AIは、業務の自動化や効率化を推進し、労働環境に大きな変化をもたらします。従来、人間が行っていた多くの業務、特にデータ処理や分析、文章作成、情報収集などの分野では、生成AIが人間に代わる役割を果たすようになっています。しかし、生成AIは単に人間の仕事を奪うのではなく、新しい仕事の創造を促すと考えるべきです。

例えば、クレジットカード明細書のように大量のデータ処理を要する業務は、生成AIによって自動化が実現しています。この技術革新は、人間を単純作業から解放し、より創造的な仕事に集中できる環境を創造します。また、生成AIは人間の創造性を補完する役割を果たし、専門知識やスキルを必要とする仕事においても、人間の能力を拡張することで、より高度な成果を追求できるようになるでしょう。

5 生成AIが敵だと思っている人が多い

生成AIを恐れる人のほとんどが生成AIを自分の敵だと思っている傾向があります。自分の業務が生成AIに奪われると思っているのです。

本来、人は想像する力を持っており、この想像力は創造性を生み、仕事へ様々なプラス効果を発揮します。

生成AIを使って仕事をすることで、その結果に感動のような感覚を持てれば、じゃあこれを生成AIにやらせたらどうなる、生成AIへこう指示すれば良い答えがでるかな?等の喜びのような感情が湧いてきます。そのような環境を作ることができれば、現場は時代の変化に対応できるでしょう。

6 これからの教育と社会構造をどう転換するか

日本の社会構造は、大量生産・大量消費の時代に合わせて形成されてきましたが、人口減少や技術革新によって、そのモデルは通用しなくなってきています。規律性と画一性を重視する教育制度や社会構造は自ら生成AIと対峙する構造を作り出してしまいます。

生成AIは、このような社会構造の転換を促進する潜在力を持つ技術です。生成AIを活用することで、日本の教育制度は、創造性と変化への適応力、そして問題解決能力を重視した新しいモデルに進化する可能性があります。生成AIをどう仕事に組み込むかを考え実戦していけば、社会全体で新しい雇用を生み出し、より持続可能な労働環境を構築する上で重要な役割を担うでしょう。ポイントは生成AIをどう仕事に組み込むかです。

生成AIは単なる技術革新ではありません。それは、私たち人間の可能性を拡大し、未来の社会を創造するための強力なツールです。

これは私が6カ月ほど業務で生成AIと向き合い、どう仕事に組み込むかを実践してきた感想です。

7 現場で感じる変化

従来、データ入力を行っていた従業員に、生成AIにどう入力作業をさせるか方法を教えたところ、非常に好印象な反応を示しました。そこからその従業員は生成AIへデータとそのデータ解析への指示の仕方を色々工夫するようになりました。驚くのは自分でも想像しないような好結果を出すようになり、その例を元にさらに精度の高いデータを抽出することに成功しています。私たちの部署では生成AIは仕事には欠かせないツールになりました。

普段あまり話さない従業員ともこの生成AIの利用方法で話すようになり、相乗効果が出始めています。生成AIは、単なるツールではありません。仕事の効率化だけでなく、新たな発見や創造を生み出すパートナーです。

私たちの部署のように、生成AIを導入することで、従業員の能力を最大限に引き出し、想像をはるかに超える成果に繋げることができます。

微力ながらも生成AIの導入、活用をサポートすることができますので、ぜひお気軽にご相談ください。

《参考文献》

『デジタルの大波⑴〜⑸』2024年5月6日〜5月10日付日本経済新聞
『AIのウィンブルドン現象(Deep Insight)』2024年5月2日付日本経済新聞
『教員「残業代」50年ぶり前進中教審部会で了承待遇改善案、勤務間の休息「11時間」に』2024年5月14日付日本経済新聞

 

 

お問い合わせ

神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートいたします

お問い合わせ

 

第71回 業務に生成AIを活用する方法③” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。