緊急時の残業命令について

1 大規模な災害が起こったら

大規模な自然災害など緊急事態が発生すると、その対応のため通常時よりも長時間の残業(いわゆる法定時間外労働、休日労働など)が、必要になる場合があります。業務の性質によっては通常想定している残業時間の上限を超えてしまう場合があります。

こういった緊急時には、労働基準法33条において例外が定められています。本稿ではその緊急時の例外について解説しますが、その前に通常時の残業命令がどのような根拠に基づいて行われるかを次の章でみていきます。

2 残業命令の根拠

事業主は原則として、労働者を法定労働時間の上限である1週間につき40時間、または1日につき8時間を超えて労働させることはできません。これを超えて労働させる場合には、次の2つの要件を満たす必要があります。

1つ目は、残業を命じる契約です。対象の労働者に適用される就業規則での定めや労働条件通知書(雇用契約書などの場合もある)に契約内容として記載する必要があります。

2つ目は、本来違法となる残業を行わせるため、時間外労働・休日労働に関する協定を(36協定)労働基準監督署に届け出る必要があります。これは残業を命じることができる時間の上限や業務の内容について労使間で結ぶ協定です。これを結び適切に届け出ることによって、協定で定めた時間の範囲内であれば残業をさせても違法とはなりません。

3 緊急時の残業命令に関する例外

緊急時には、36協定や雇用契約の見直しを行う猶予がないなどの事情を考慮してか、行政官庁の許可または事後の届出によって次のような取り扱いができることとされています。

「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において労働時間を延長休日に労働させることができる。」【労働基準法33条抜粋】

具体的には、地震や火災等の災害への対応、公益や人命を保護するために必要な場合、予見できない重大で突発的な設備の故障、システム障害等への対応などが対象となります。この例外に該当する労働時間は、36協定に定める時間外労働の集計には含めません。また、事後の届出によって行政官庁より例外の適用が不適当とされた場合は、後にその時間に相当する休憩を与えるよう命じられることがあります。

 

 

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