相続と税理士のしごと

私と相続のしごと

会長

私が相続の仕事を始めたのは昭和40年の初めのころからである。当時は東急田園都市線沿線の開発・土地買収や造成工事が始まっていたころである。相続税申告の仕事は税理士の仕事ではあるが、ついでの仕事というか仕事の報酬は農産物(野菜、コメ、果物など)であった。

しかし、沿線の開通により社会環境が一変した。昭和40年代の半ばころ「遺言」による相続があった。今では遺言は相続の必須アイテムとして取り上げられているが、当時は大混乱の因(もと)で、以後その相続人はお互いに絶縁状態になってしまった。

このような経験から、「相続は相続人、特に兄弟姉妹が相続後も仲良く親戚付き合いができるように」と遺産分割協議に積極的に立ち会うようになった。

当時よく相続人の方々に言ったのは「皆さんの要求をそのまま受け入れると遺産の3倍になります。ですから、円満に相続を終わらせるには皆さん少しずつ我慢をしてください」といったものである。

同じく遺産を分けるにあたってもやり方で税額や負担の効果が異なることが多いので、遺産分割協議の場を設け、その場に同席させてもらい、相続人の方々の考えなどについて税理士としての立場から説明しご理解をいただいて、多少の不満があっても分割協議を成立させるコーディネーター役を務めてきた。

相続に携わる職業には弁護士と司法書士がある。

弁護士は相続人の特定の一人の代理であって、依頼者の利益を最大限に満たすことがその使命である。弁護士も遺産分割をまとめることは当然のこととしてできるが、以前は相続税のことは全く考慮されていないことが多かった。

司法書士は相続に関しては特に不動産について相続登記の依頼があればその依頼された不動産について相続登記をすることが仕事である。

ビジネスとしての相続

長寿社会が実現してからは「相続をビジネス」にすることが起きてきた。最初は信託銀行の「遺言信託」であったと思う。その後法定後見人制度や信託制度が新しく導入され、最近は家族信託など続々と「相続ビジネス」が広まってきた。

信託銀行が遺言信託を始めてから信託銀行からのオファーで遺言信託者が亡くなられた後の相続税の申告書作成業務をいくつも手伝わせていただいた。やってはみたが、なかなか息が合わないのである。なぜかははっきりしないが、一つは信託銀行側が「税理士は遺言に従って相続税を計算すればよい」という姿勢が濃厚であったことだ。確かに税理士は税金を計算することが職業としての税理士の業務の基盤である。

しかし、その過程で評価を含む全財産把握と相続人全員との面談を通じて相続人の意思を完全に把握し得る立場にあり、遺言をそのまま実行することについて相続人が望まないことが起こるのである。あるいは、遺言者が意図したことと違った結果が生じうることがあり、相続人全員の合意で遺言の内容を変更したいときが生じるのである。

遺言書があっても相続人全員の合意があれば遺言書によらず遺産分割協議書を作成して相続を完結させてもよいことは広く知られているところである。

遺言作成者たる信託銀行は遺言執行報酬をもらえないと勘違いしたのだろうか、あるいは、自分たちの不備を指摘されたと勘違いしたのだろうか、このようなことをいう税理士を敬遠したのかもしれない。最近も遺言執行人を務める、ある金融機関の社員が相続人たるお客さまの前で、「この遺言の執行報酬は〇〇〇万円だからな」と後輩の社員にささやいていたのが印象的であった。

相続と税理士のしごと

相続において大切なことは、相続事務を手際よく進めることも大事だが、「相続後も兄弟姉妹仲良く」できるよう気配り、心配りすること、さらには相続人全員が相続に伴う不安を取り除くことがもっとも重要なことだと思っている。

相続の手続きや申告に遭遇する人でも一生に一度のことが多い。だから相続に関する知識情報が少ないのは当然として、情報が偏っていたり、とんでもない思い込みも少なくはない。また、相続が始まると周囲からいろいろな風説や不正確な伝聞情報が当事者の耳に入ってくることも多い。

このような情報ギャップを埋め、不安を解消させる総合的なコーディネータ役を担うのは、日ごろ会計業務や所得税の確定申告を通じてお客さまと接している税理士が最もふさわしいと思っている。



税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

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