不安定な時代

戦後最長景気

会長

今月で日本の景気は平成2〜8年の「いざなみ景気」を越えて戦後最長の景気がつづいているといわれている。しかし、多くの識者が指摘しているように、現在進行中の景気上昇は、「実感なき景気回復」といわれ、期間の長い割には実感がわかないのが実情ではなかろうか。

その理由は昨年10月までの景気動向指数を見ればわかるように、71カ月中31カ月は「足踏み状態」であったそうである。また「改善」と判定される場合であっても1%前後と過去の上昇期に比較すれば改善と言えない程度の改善に過ぎないのである。

「7」の年のジンクス

証券業界では有名な「7」の年のジンクスがある。「7」のつく年は株式が暴落する割合が高いと云われていた。しかし、2017年はジンクスがはずれて日本経済は戦後最長景気を更新する状況であった。

ジンクスが外れたのはリーマンショックの後、FRB・ECB・日本銀行・中国人民銀行など世界の中央銀行が長期にわたって異次元の金融緩和を行ったからである。

FRBは2015年まで、ECBは2018年まで金融緩和政策を行った。しかし、日本銀行はまだまだ異次元の金融緩和を続けているからであって、「7」の年のジンクスは2018~9年まで繰り延べられたと考えるのが妥当であろう。

今年は波乱の年

戦後最長景気といえどもいつか終わるのである。昨年末から年初にかけて今年の予想など新聞・テレビ・雑誌などで特集を組んで報じられている。

9日に日本銀行が発表した昨年12月の「生活意識調査」によれば、1年後の景況感はアベノミクス前の水準まで下がるという悲観的な見方が強まっている。

波乱要因の第一はアメリカのトランプ大統領である。筆頭は米中貿易戦争であり、次はイスラエル、サウジアラビア、トルコ、イランなどを巡る中東情勢の不安定化がもたらす混乱、米朝関係も大きな不安要因の一つである。

次に、アメリカの景気動向とFRBの利上げ動向も大きな波乱要因であり、年末年始の株価の乱高下はその象徴である。

また、アメリカの外交政策が内向きになってきており既に2018年には新興国の政治・経済への影響が大きく表れている。

3月のイギリスの「BRXIT」はメイ首相の離脱案が大差で否決され、混迷の度を深めている。また、イタリアの反EU的な政権に代表されるように東ヨーロッパの国々の中にも反EU政権が誕生しつつあり、EUの大きな不安定要因となっている。

国内的には ① 政治では12年に1度の地方選挙と参議院議員選挙が重なること、併せて衆参同時選挙もうわさされていること、② 10月の消費税増税を巡る景気への影響も懸念されている。

取り残された日本銀行

前段でも触れたが、昨年12月EUの中央銀行ECBが量的緩和の打ち切りを宣言した。アメリカのFRBは既に量的緩和を終了し、金利正常化のプロセスに入っており、12月20日には18年4回目、通算9回目の利上げをし政策金利を2・5%にした。しかし、日本銀行の黒田総裁は量的緩和を継続する旨の談話を発表し、金利正常化への道筋、いわゆる「出口論」は封印されたままである。

「景気後退に備えなき日銀」、これはエコノミスト2018年12月25日号にでていた記事のタイトルである。

「より厳しい状況になり得るのは日本だ。(略)米国経済が先行き下り坂に入り、数年後にFRBがゼロ金利やQEにもどったら、日米金利差は大幅に縮小、円高が顕著に進む可能性がある。世界で政策バッファーを持たない中央銀行は明らかに日銀であることをわれわれは認識しておく必要がある」としてこれから迎えようとしている景気の下降、不況に対する政策能力に疑問を呈しているのである。

「OR」から「AND」へ

このタイトルは服部正成氏が「文明が転換するとき」という著書の中で800年周期で転嫁している文明の周期の中で現在は二者択一の「西洋文明」から融合的な「東洋文明」への転換期であり、それを指して「OR世界」から「AND世界」へと云われている。

5月1日から元号が改まる。どんな元号になるかわからないが、新天皇の時代は財政破綻など経済災害を含む混沌と停滞の時代を経つつも上昇に向かう時代になって欲しいと願うのである。



税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

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