世界と比べた日本の労働時間規制

働き方改革関連法が続々と施行されていきますが、その中において時間外労働の上限規制が行われます。

企業にとっては、社会保険負担などから1人の労働者になるべく長時間働いてもらった方が経済的利益となるため、労働者には有形無形の長時間労働の要求がなされる傾向があります。しかし、余暇や生活時間は労働者にとって重要ですし、何より長時間労働による健康被害回避のため、なんらかの規制が必要となってきます。どのような考え方で今回の改正が行われているか、他国の規制と比べてみていきたいと思います。

労働時間の規制の方法は、大きく分けて2種類あります。労働時間の量的上限規制と割増賃金による規制です。労働時間の上限規制は、主に欧州で行われている手法で、割増賃金による規制は米国や日本、韓国で行われています。日本や韓国では上限も定められており、両方をかけ合わせた制度になっています。

◉割増賃金による規制

米国では、時間外労働に対して5割の割増賃金を支払う義務があります。労働時間の上限規制はなく、割増賃金についても利益の公平な分配といった面が強いのですが、企業の経済的利益を圧縮することで長時間労働の抑止ともなります。

◉労働時間の上限規制

一方、欧州では労働時間の上限が決められており、その範囲で就労させることになります。労働協約によって上限を増やすことは可能ですが、その場合も退勤してから出勤するまでを一定時間以上あけての休息時間を確保する「勤務間インターバル」を設けなければなりません。
欧州では時間外労働に割増賃金の支払いが法定されていません。労使協定などで任意に定められているのみです。

◉日本の労働時間規制

日本は、36協定に特別条項をつけることで現行の上限規制もある程度回避できます。労使関係も欧米のように契約主義ではないため、長時間労働が行われ易い風土となっています。今回の改正では、時間外労働時間に上限規制がより厳格に課せられ、勤務間インターバルも努力義務とされましたので、欧州型の上限規制の強化が行われたと言えます。
法律の履行と共に労使の努力で働きやすい社会を目指したいものです。

※米国においては州ごと、欧州においても国ごとの違いがありますので、各地域の主な考え方としてご理解ください。

 

 


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