雑感二題
私の手元にズット気になって残っている新聞の切抜きがある。一つは日本経済新聞の07年12月27日付で「主婦らに投資熱:FX長者、相次ぐ申告漏れ:納税意識の低さ背景?」である。もう一つは、産経新聞の07年12月24日付け曽野綾子氏のコラム「透明な歳月の光・269」(「消えた年金」問題:できることだけ言え)である。
この切抜きを見るたびになにかもやもやしたものを感じているのだが、今ひとつ焦点が絞りきれないでいたものである。今回はこれについて感想を述べてみたい。
納税意識について
まず日本経済新聞のFX脱税(*)に関する切抜きについては次に抜粋した「納税意識」についての表現が税に係わる者として引っかかっていたのである。
「得をした年だけ税金を納めるのは不公平と考える」のは納税意識が低いと言えるのだろうか。所得課税制度の下では、損失のある年は前年の納税額を返してもらうか、翌年に繰越ができると考えるのが自然である。
記事の裏にある「高い納税意識」とはどういうことを言うのだろうか。「税制は社会を変える」と言われているように、納税意識は相対的なものである。
納税の必要性は国民の誰でもが認めているが、税金の取り方、使われ方、税金の負担の割合など多面的な要因によって納税意識は微妙に変わってくるのである。巷間報道されているような税金の使われ方を見て国民はうんざりしているのではなかろうか。
(新聞の切抜きから)
共通するのは、納税意識の薄さ。世田谷区の主婦は有罪となった八月の東京地裁判決で「得をした年だけ税金を納めるのは不公平と考えるなど、納税意識はきわめて低かった」と指摘された。
FX取引(*)は極めて投機性の高い取引である。このような取引について所得のあった年だけ課税し、損失が生じた年については『見ない』というのは、国を挙げて「貯蓄から投資へ」と掛け声をかけているいま、現行税制上の課題として捉えるべきであり、国民の納税意識を低いと極めつけるのは如何なものかと思うのである。
「できることだけ言え」について
曽野綾子氏はコラムで年金問題について、「厚労大臣が三月までに調査する、と言って、そのとおりにできると皆ほんとうに思っていたのだろうか。」と問い、自らの体験に基づいて、「これははじめから『できるわけがないこと』」と言い切ったうえで、年金問題で活躍している長妻氏に対し「できないことを知りつつ言わせておいて今追及するというのは、政治的手腕としてはお見事だが、ほんとうに国民の立場を考える人のやり方ではない。」と批判している。
同感である。では、年金問題について今すぐできること、今すぐやらなければならないことは何なのだろうか。端的にいえば、年金に関する情報を国民に開示することである。
もう少し具体的に言えば、直ちに、20歳以上の全国民に毎年一回例えば誕生月に空白期間も含む全期間についての年金記録を期間ごとの納付金額、会社負担分を含む積立金額や受給年金見込額などと通知する。
第二に、空白期間について国民が調査できるように未統合年金記録を公開するとともに、社会保険事務所の職員だけでなく、国民が自ら調査ができるように社会保険労務士、税理士、公認会計士、弁護士、司法書士、行政書士、ファイナンシャル・プランナーなど専門家集団に代理権限を与え一定の費用保証をして調査の迅速化をはかる。
第三に第三者年金審査機関を設けて三年、五年と言わず最後まで何年かかろうとやり遂げる。ことを宣言し、実行することであろう。
以前にこれに似たようなことがあった。固定資産税の評価について、それまでは閲覧申請しなければ自らの評価額が判らなかったが、平成6年多くの不服審査請求を受けて納税通知書に毎年評価額を記載して通知するようになった。
国民からの申請主義から内容開示主義に変わったのである。年金問題も速やかに全国民に毎年通知する内容開示主義に変更するだけで自然に未統合データは解消していくであろう。国会における議論を聞いていると問題解決の本質から程遠い不毛の審議、議論に映るのは私だけではないと思う。
(*)FX=Foreign Exchange(外国為替)の略
FX取引=外国為替証拠金取引の略称。
FX脱税=外国為替証拠金取引による利益を申告せず脱税した事件。
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