中小企業格付け
中小企業の現状
戦後最長の景気が続いている。しかし、 06 年版 中小企業白書によると中小企業の倒産は増加しており、また、帝国データバンクによると景気拡大にもかかわらず、今年の上半期の企業倒産は前年同期を 17 %も上回っているとのことである。
貸し渋りから貸し剥がしといわれた 97年から 02 年、ちょうど 20 世紀から21世紀にかけて大企業をはじめ、多くの中小企業が倒産や転廃業に追い込まれ、現在では、ピーク時の80 %にまで中小企業数は減少してしまった。
しかも、都市銀行の不良債権処理が一応済んだ昨年から地域金融機関の不良債権処理が始まっており、まだしばらくは中小企業の最後の淘汰が続くのではなかろうか。当グループのお客さまの決算状況を見ても状況は下降しており中小企業の状況は良い状態とは いえない。
20世紀から 21世紀に移行するに当たり、パラダイムの転換がまだまだ、深く静かに進行していて、旧パラダイムの世代の企業の淘汰が進んでいるのであろう。お客さまの現状をみても、物販関係はおよそ昭和 63 年から平成3年頃をピークに暫減してきて、今は昭和 50 年初頭のころと同じ水準にまで落ちているのである。新しく台頭してきた企業もあるが、まだまだ全体の主力になるまでになっていない。
変わってきた 中小企業の環境
しかし、中小企業を取り巻く環境は変わってき ていることも実感できるのである。バブル期以後誕生し過剰債務、過剰投資をしたくてもできなかった企業の中から、各種の規制緩和や商法・会社法の改正や、間接金融から直接金融への流れの中で成長軌道に乗ってきた企業は確実に増加してきている。
また、中小企業の成長のスピードをあげるM&Aの件数も増加している。何よりも、政府の政策頼みの依存体質から自力による経営努力へ変わってきた事が強く感じられるのである。
昨年(平成 18 年)から金融機関の融資残高が+(プラス)に転じ、中小企業への融資は1年早く平成 17 年から+(プラス)に転じてきている。デフレを経て金融機関の融資審査のあり方が大 きく変わってきている。
中小企業に対しても「中小企業の会計基準」が整備されて、融資審査は情実を排するため決算書による形式的 な審査が中心となって きた。従来の返済能力があ るか、すな わち“担保があるか”から“経営として成り立っているか”が、 まず、問われることとなっ た。
客観的な企業の財務信用力評価基準の誕生
05年 12月から日本リス ク・データ・バンク(RDB)とスタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)はRDBが保有する「中堅・中小企業の財務データベース」とS&P社の100年にわたる 「企業格付けノウハウ」 を有機結合し、年商 10 億円以上の中堅・中小企業を対象とした格付けサービスを始めた。中小企業専用「日本SME格付け」である。
S&Pやその他の格付け会社が行っている格付けは事業会社ばかりではなく、金融機関、地方公共団体、大学にまで及んでいる。また、国境を越えて、投資先や取引相手の信用力を判断する上で、世界基準で一貫性のある共通言語として重要な役割を果たしている「世界的な信用ブランド」である。この格付けが日本の中小企業にも行われることになったのである。
格付けを利用して 成長発展へ
この格付けからどのようなことが期待できるのだろうか。素晴らしい技術やサー ビスを保有していても、非上場であるがゆえに、うまく市場に喧伝できなかった中小企業、財務的に問題ないが上場する意義を見出せずに非上場を維持 している中小企業、バブル期に踊らず強固堅牢な経営を維持している中小企業、オンリーワンでありながら爆発的な成長の「きっかけ」を得ていない中小企業、非上場ゆえの採用難に苦慮している企業などは、この企業格付けを取得することにより、大きな成長のチャンスに近づくことができるのではなかろうか。
格付対象会社は売上が10億円以上である。設立間もない企業で格付けの 対象にならない企業であっても、まずは第一の目標は 10 億円企業を目指すことが指標として明確になった。
税理士法人 LRパートナーズ 代表社員 小川湧三
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