「遺留分侵害額請求権」と「特別寄与料」
2026/07/23
「遺留分侵害額請求権」と「特別寄与料」との関係について、令和5年10月26日に最高裁判所で決定された裁判が興味深いのでご紹介します。
特別寄与料は、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした親族が、相続人に対して支払いの請求ができる民法に定められた権利です。
また、相続人が数人ある場合の特別寄与料の負担については、各相続人の民法に定められた相続分に応じた負担をすることとされています。
今回の裁判は、遺言により相続分がないとされた相続人が、遺留分侵害額請求権を行使して財産を取得した場合に、他の親族が特別寄与料を、相続分がないとされた相続人に支払いを求められるかが争われたものです。
裁判記録と私の想像を加えた概要は次の通りです。
被相続人は長男Aと同居しており、Aの妻にも面倒を見てもらっていた。それを踏まえ、被相続人は「私が死んだら私の財産の全てをAに相続させる」旨の遺言書を作成した。しかし被相続人の死亡後、相続する財産がないと知らされた別居の長女Bは、遺留分侵害額請求権を行使して、遺留分相当額(法定相続分2分の1×遺留分2分の1=4分の1)の金銭の支払いを求めた。
多額の遺留分相当額を支払うこととなったA側は、「同居していて看病や被相続人のわがままも聞いていたのに、このまま遺留分相当額を支払うのは癪に障る。Aの妻には特別の寄与があったのだから、その遺留分相当額から特別寄与料を支払ってほしい」と求めた。
これに対し最高裁判所は、特別寄与料の負担割合は法定相続分等によることとしたものであり、「遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当である」と判断しました。
つまり、Aの妻が特別寄与料を請求できるのは、すべての財産を相続させるとされた自分の夫Aだけということになります。
遺留分は相続人に認められた最低限の権利と考えられていますので、かなり強い権利であると考えさせられる裁判と思われます。
税理士法人LRパートナーズ
川崎事務所 所長 嶋田 栄一

