相続の落とし穴「遺留分」~争族を回避し、大切な資産と事業を次世代につなぐために~
2026/09/18第427回 ロングリレーションズ倶楽部
テーマ:
相続の落とし穴「遺留分」~争族を回避し、大切な資産と事業を次世代につなぐために~
講師:
第2部 税理士法人LRパートナーズ 川崎事務所 所長 嶋田 栄一
平成31年、民法改正により、遺留分の取得方法は原則として金銭での請求に一本化されました。
この改正により現物取得に伴う複雑な共有状態は解消されたものの、財産を多く取得した後継者が多額の金銭負担を迫られる新たなリスクが生じています。遺留分をどのような順序で負担するかについては、分かりづらい部分も多いと思います。
原則として、遺言によって財産を取得した方が先に遺留分を支払います。該当する方が複数いる場合は、各自が取得した財産の金額割合に応じて、負担額を分担します。
ここで、遺言での取得分だけでは不足する場合に、遺言とは別の生前贈与を受けた方が負担します。
遺言で財産を得た方の分だけでは遺留分の全額をカバーできない場合に限り、生前贈与を受けた方が負担を引き継ぎます。生前贈与が複数回行われていた場合は、「最も新しい贈与」を受けた方から順に遡って負担していくことになります。
実務上特に留意すべき点として、生前贈与と遺贈の受領状況によって負担額に差が生じる点が挙げられます。
また遺留分の算定においては、相続税の評価額ではなく相続開始時の時価が基準となります。
そのため、地価の上昇等により、遺言書作成時には想定していなかった遺留分侵害額が発生し、後継者の金銭負担が過大となる恐れがあります。
不動産や自社株式のように現金化しにくい資産が財産の大部分を占める場合、後継者は突然数千万円規模の金銭支払いを求められ、事業用資産の売却や過度な借入れを余儀なくされるケースも少なくありません。
さらに、よかれと思って生前贈与で相続対策をしていたとしても、事前の準備不足によって思わぬところで支払い負担が大きくなってしまうリスクがあります。
こうした事態を防ぐためには、生前贈与した財産を遺留分の計算対象から外す仕組みや、評価額をあらかじめ固定しておく仕組みといった法律上の特例制度を活用するほか、万が一に備えて手元資金を準備しておくなど、遺留分の負担をあらかじめ見越した総合的な相続対策が不可欠です。

