新成長戦略
2026/11/05骨太の方針

高市政権は「責任ある成長戦略」として通称「骨太の方針2026」「経済財政運営と改革の基本方針2026『責任ある積極財政』元年~日本の挑戦を起動する!~」を7月21日に閣議決定し、発表した。
日本成長戦略において、17の戦略分野と総額370兆円に及ぶ官民投資目標を決定した。政府は民間投資への呼び水として毎年10兆円を投資するという。
17の戦略分野は次の通り。
① AI・半導体
② デジタル・サイバーセキュリティ
③ 情報通信
④ 量子
⑤ 防衛産業
⑥ 航空・宇宙
⑦ 海洋
⑧ 造船
⑨ マテリアル
⑩ 合成生物学・バイオ
⑪ 創薬・先端医療
⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX
⑬ フュージョンエネルギー
⑭ 防災・国土強靱化
⑮ 港湾ロジスティクス
⑯ フードテック
⑰ コンテンツ
失われた30年を振り返る
「失われた30年」はベルリンの壁崩壊に始まる。日本では壁崩壊の翌年年初からバブル崩壊が始まった。
ベルリンの壁崩壊により全世界が自由主義経済圏に入ったとの認識から新自由主義(グローバル・エコノミー)への期待が高まり、国内産業は折からのバブル崩壊による低迷から脱却すべく、海外の低賃金を求めて次々と国内工場を閉鎖し、第1波、第2波と海外進出を始めた。
特に中国がWTOに加盟したのを契機に日本の製造業は国を挙げて中国の低賃金を求めて国内工場を閉鎖(日本国内からの投資の引き上げと言ってもよい)して中国へ進出したのが、国内産業や日本経済への致命傷となったと思っている。当グループのお客さまにも多くの廃業や転業があったので鮮明に記憶している。
一億総中流時代の到来と言われた時もあったが、製造業の賃金労働者、中小企業者、それらを支える商業・サービス業経営者層が新自由主義・グローバル・エコノミーの波に飲み込まれて崩壊し、下流層へ転落したのが「失われた30年」の真相である。
人への投資
これから脱却するためには、少々の投資政策では間に合わない。即効性のある投資でなければならない。
人口の大半が中流から下層階級へ転落し、子どもを産み育てることが「子育て罰」と受け止められるほどの社会に成り下がってしまった。
高市政権がその現状を認識して積極的な投資を政策の中心に据えたのはもっともなことだと思う。むしろ、遅かったといっても過言ではない。
失われた30年の最大の損失は国内産業を衰退させたこともさることながら、大元は少子化による人口減少を加速させたことである。
人口対策は30年にわたる超長期の対策である。人口減少が続いている現在、人口増加対策の策定がまず来るべきであろう。
エマニュエル・トッド氏は著書(※1)の中で「少子化は安全保障以上の問題」「日本の問題は『経済問題』ではなく『人口問題』」だと書いている。
子ども年金
人への投資として1つの提案がある。今までも何度か書いているが、再度提案してみたい。それは「子ども年金」(※2)である。子どもは生まれた瞬間から1人の人間として憲法で保障された生存権を有している。
しかし、その生存権は両親に全面的に委ねられ、親の格差が拡大して「格差社会」と言われるような時代になってしまった現在、親の所得により生存権を脅かされ、誰もが安心して子どもを産み育てる社会になっていないのである。
親の所得に左右されないように、子どもが生まれた瞬間から子どもの生存権を保障する「子ども年金」を支給することを提案するものである。
子どもへの投資は子どもが成長し社会へ貢献できるまでの30年の超長期の投資であり、「子ども年金」は建設国債と同様に一般国債と分離すべきと考えている。
また、親には妊娠が判明した時から親の所得保障と合わせて養育費用を別途支給し、積極的に子育てに関われるようにすべきであろう。
「子ども年金」はヘリコプターマネー、ベーシックインカムに似た性質を持つものと理解しており、投資としての即効性は極めて高いものと認識している。
日本の財政は大丈夫?
高市政権は「財政健全化の旗」を降ろし、積極的成長戦略に切り替え、消費税減税や「骨太の方針」により投資プロジェクトを始動した。
世界のラストベルト(※3)にならないように産業再生への成長戦略投資へ明確に舵を切ったのは、時期が遅かったとはいえ、日本にとっては重要な分岐点である。ジョージ・ソロスが現れないことを祈る。
(※1)エマニュエル・トッド氏(著)『西洋の敗北と日本の選択』p・55、p・85
(※2)ほっとタイムス282号、304号
(※3)ほっとタイムス305号
LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

