いつの間にか富裕層
2026/07/22
新しい富裕層
格差拡大による負の面「失われた30年」をテーマに直近の「子育て罰」など、格差拡大の負の面ばかりに焦点を当てて話題を取り上げてきたが、最近『「いつの間にか富裕層」の正体』(※)という明るい話題の本に出合った。格差拡大という範疇に入るが、明るい面を取り上げている。
毎年2~3月に個人の方々の所得税の確定申告を扱わせていただいているが、数年前からストック・オプションなどによるサラリーマンの方の確定申告を見受けるようになってきた。最近の株価上昇とも関連しているので読んでみた。
「いつの間にか富裕層」とは
「いつの間にか富裕層」を、資産形成の経路によって大きく3つの類型に分けている。(p.73~)
「1つ目の類型は主に50代後半以降の現役の給与所得者や60代前半の退職金等受給者が中心で、勤務先の持株会や企業年金制度を活用し、長期的に資産を積み上げてきた層です。」
「2つ目の類型は現役の給与所得者で、株式などを中心にリスク性資産を非常に高い割合で保有していた層です。」
「3つ目は退職金の運用が成功した60代後半から70代以上の退職者層です。定年退職時に受け取った退職金などのまとまったお金を、昨今の相場上昇によって大きく増やした高齢者層です。」
貯蓄から投資へ
2001年「貯蓄から投資へ」と言われだしてから25年経つ。
施策としては「確定拠出年金制度」「NISA(少額投資非課税制度)」「新NISA」と整備されてきた。
しかし、この間の株式市場は波乱万丈といってもよいほどであった。
バブル期の1989年12月29日に最高値3万8915円を付けた日経平均は、リーマン・ショックの翌2009年3月には史上最安値の7054円まで暴落し「貯蓄から投資」へのコンセプトを台無しにする成績であった。
その後、アベノミクスの効果あってか、東日本大震災・コロナ・パンデミックを乗り越え2年前の2024年2月22日にバブル期の最高値を超え史上最高値を更新する3万9098円まで回復してきた。
その後、さらに日本株への見直し期待が高まり、今年5月26日には6万5000円を超える勢いを見せ、6月17日には7万円の声まで聞かれるようになった。最安値を付けた2009年の約10倍に近い状況になって、「貯蓄から投資」への面目躍如といったところである。
「いつの間にか富裕層」への道
富裕層入りするにはどうするか。日本経済新聞の5月23日の紙面に「富裕層入り」の共通項として解説記事が掲載されていた。
「収入を上げるには」
❖会社員:子どもが3人いてもキャリアを諦めずフルタイムで「ガンガン働いた」
❖夫は「昇格試験に全力投球」。妻は派遣社員で働き、世帯収入を一気に増やす
「支出の管理は」
❖レジでの支払時に家計簿アプリに支出額を記録。「記録までが買い物」
❖車は買わず、片道10キロの自転車通勤。カーシェアとレンタカーを活用
❖「株は上下に動くもの」。リーマン・ショック時も売らずに静観
❖妻の月給内で生活。ボーナスや夫の収入などはすべて全世界株投信に投入
❖一攫千金狙いの個別銘柄投資はやめ、長期保有をベースに
「運用は」
「いつの間にか富裕層」の堅実な生活実態を紹介している。
「貯蓄から資産形成へ」
「貯蓄から投資」へのコンセプトの正しさが株価上昇とともに実感できた「いつの間にか富裕層」はさらに拡大していくことであろう。
今、言われだしているのは「貯蓄から投資」の局面を通り過ぎて「貯蓄から資産形成」へである。
高齢化社会になればなるほど、労働から遠ざかる高齢者にとっては「形成された資産の蓄積」が高齢化社会の安定性をもたらす。
「失われた30年」と言われ、格差拡大が進んだ中で、下へこぼれ落ちる人たちに焦点を当てた論調が主流だったといってよい。
今、コロナ・パンデミックの後に起きた日本のインフレ・円安の訪れとともにやってきた株価の上昇がもたらした明るい話題で、貧困と対極にある格差社会の中で上昇する人たちに焦点を当てた本に出合った。というのが感想である。
(※)竹中啓貴氏・荒井匡史氏(著)
『「いつの間にか富裕層」の正体普通に働き、豊かに暮らす、新しい富裕層』
LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

