中小企業だからできる生産性改革 ~一企業の取り組み事例~

❖残業代を五百万円以上削減し社員に還元

神奈川県内にある㈱コープデリバリーは親会社の生協が営む宅配事業において、商品仕分けを請け負う物流センターを運営している企業です。親会社から出向で新たに就任した社長は、社を覆う「上意下達」で言われたままに業務をこなすだけの社内の空気をみて改革を試みます。

社員の自立と成長を促すため、会社が抱える問題を洗い出し、解決する方策を社員自身に考えさせるプロジェクトを立ち上げます。その1つが「残業ゼロプロジェクト」です。これは3年計画で社員の残業をゼロにするというもの。

このプロジェクトの肝は、残業が減って浮いた分を社員に還元することです。残業時間が減っても社員の収入は下がらないので、モチベーションを下げることなく残業削減に取り組めます。残業ゼロ取組の手始めとして社員にアンケートを実施したところ、残業発生要因として挙がったのが「仕事の属人化」でした。(属人化とは、仕事の進め方が特定の人にしか分からない状態のこと)

ある社員にしかできない仕事が増えると、その社員は必然的に残業せざるを得なくなります。そこで全ての業務を図式化して「この業務は誰と誰ができるのか」を明確化し、1つの業務を最低でも2人、できれば3人以上がこなせるよう作業をマニュアル化し多能工化を進め、属人化を解消していきました。取組初年度は1人当たりの平均残業時間を16・7時間から7・7時間に短縮し1人当たり17・5万円を手当として社員に還元しました。

❖残業ゼロプロジェクトの真の目的

社長曰く、このプロジェクトは残業ゼロ自体がそもそもの目的ではなく、真の目的は2つ。1つは原資を効率よく社員に還元することで、賃金アップを実現する。2つ目はワークライフバランスの推進です。

多能工化による残業削減により有給休暇の取得率が向上し、取得率100%を達成しました。2つの目的以外にも、ワークライフバランスを実現した、働きやすい会社であることをアピールすることで、将来の人材確保や定着にもつながるといった効果もあります。

ここで紹介した「残業ゼロプロジェクト」は同社の改革プロジェクトのうちの1つにすぎませんが、この取り組みだけでも「生産性向上」「社員の士気の向上」「人手不足の解消」など中小企業が抱える様々な課題に対する解決のヒントがあるように思います。

参考文献/中小企業庁著『儲かる中小企業人手不足に負けない111のポイント』

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