長寿社会における働き方

働き方の多様性

私が子供の頃のことを思い出してみると、小学校へ上がる前から私の役割が決まっていて、私の仕事は表玄関と家の横に空いている土間と、裏の出入り口の掃除がいつの間にか日課になっていて、その掃除が終わって食事をする習わしになっていた。

冬は冬で玄関から両隣までの雪掻きが日課であった。祖母も祖母なりに畑仕事や家の片づけやお茶の支度などをしていたのを思い出す。

長寿社会は年齢構成はもちろん、働く能力や働き方が多様な社会である。ご承知のように4人に1人は 90 歳を超え、8人に1人は100歳近くまで生存できる社会である。働く能力も体力も年齢に応じて千差万別、企業では働けなくなっても、社会的役割を担う働き方もある。

社会的、対外的に働けなくとも家庭の中では一定の役割を担うこともできる。年老いてもそこに生活していること自体、存在自体が周りの人々に励ましを与える存在でもありうるのである。

地方の復権と循環型社会へ

都市にはマンションが乱立しているが、マンションの中で生涯を終わる社会は異常である。

私は養鶏農家を見ているが、マンションに住む住人はさながら鶏と同じようにケージに閉じこめられた鶏のように見えることがある。

翻ってマンション生活をみると、一旦家の中に入れば一切外界の音が聞こえず、隣り近所の生活音も聞こえず、人影も見えない。家の中の自分や 家族が出す音だけである。壁ひとつ隔てた隣家は全く関わりはなく無関係に近い。隣近所や地域社会と隔絶してしまっているのである。

私が考える循環型社会とは程遠い。私が考える循環型社会は例えば鮭が清流で育ち、大海へ出て成年期を過ごし、やがて育った川へ戻ってきて一生を終えるように、幼少期には地方で緩やかな時間の中で育ち、やがて都会や世界に出て活躍し、老後にはまた緩やかな時間の中でそれぞれの役割を果たしながら生まれ故郷の中で役割を担いながら生涯を送れる社会を考えている。

長寿社会における女性の働き方

安倍政権では労働力人口の減少が見込まれることから、女性が活躍すべく育児休暇の延長要請などしているが、むしろ子育て期間中は企業の労働力から離れて子育てに専念させる政策を打ち出すべきではなかろうか。

子育て終了後の人生は50〜60年あるのである。子育てを終えて労働力として参入し、全力投入することを考えることが生産性の向上につながるし、少子化対策にもなるであろう。

かつて、セカンドハウス構想が提唱されたことがある。このセカンドハウス構想を再検討し、子育てが安心してできるように地方にセカンドハウスを持ち子育て期間を地域の連帯が生きている中で子育てができるようにする。

こうすれば地方の活性化と都市における乳幼児の保育園等の不足解消にもつながる。

また、年老いたら自然豊かな土地で余生を送るような社会ができれば都市における介護施設の待機の解消にもつながると思う。

地方を活性化するには財政基盤を確立しなければならないが、この点については以前提案した「ふるさと納税制度」(H23・11月号)をご覧いただきたい。

循環型社会における労働契約

企業は社会のなかの一制度である。人も企業と社会との間を円滑に循環できる制度が望ましい。

女性に関して言えば子育て期間は企業から離れ、子育てが終われば企業復帰のトレーニングの期間を経て企業で働けるようにするべきである。

終身雇用は成長期の企業の論理であって、下降期や変革期にはなじまないものである。

循環型社会において企業における労働契約の在り方は企業と社会の循環、都市と地方との間の循環、日本と世界との循環がスムーズに行えるように、働ける人はいつまでも働けるようにする定年制の廃止と、定期的に企業と労働者とがお互いを見直すことができる有期労働契約制が望ましい。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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